人は誰でもウソをつき、それを無意識のうちに隠しているという。ではなぜ人はウソをつくのか。そのメカニズムと、ウソの見分け方を日本ビジネス心理学会の会長が解説する。

男と女。どちらがウソつきなのか

「ウソつきが多いか少ないかに男女の差はありません。言語コミュニケーションにウソはつきもの。男女を問わず、つかない人間はいない、と考えたほうが賢明です」

写真=iStock.com/SIphotography

心理学者で『人はなぜウソをつくのか?』(毎日新聞社)の著書もある、立正大学名誉教授の齊藤勇氏はそう解説する。

人間がつくウソは、詐欺のように相手を騙して、損害を与えるものだけではない。たとえば、相手を傷つけないためにつくウソ、自分が悪く思われないためにつくウソもある。情報の取捨選択や、ちょっと話を盛る脚色まで含めれば、たしかに「ウソをつかない人間はいない」と言えそうだ。

上司への陰口でよくある「あの人は相手によって言うことが違う」もその1つ。ビジネス上の情報は、相手や状況に合わせて発信する内容が異なるのは当然。逆にTPOをわきまえずに本音ばかり口に出せば、“空気が読めない”という烙印を押されかねない。

「そういう日常のウソは、人間が社会的な生き物である証しと言えます。社会生活を円滑に営むために、ときにはウソも必要になる。代表的なものがお世辞やゴマスリ。そこには男女の違いが表れます。男性は“上下関係”、女性は“好き嫌い”がキーワードです」

女性たちに評判がよくないのは、男性が上司に対して露骨にゴマを擂ること。あまり有能でない上司にも、「いやぁ、さすが課長!」などと露骨におべんちゃらを言うタイプは男性社員に多い。そんな歯の浮くようなお世辞でも、言われた上司のほうはご満悦になるものだ。部下が本当に上司を尊敬していればウソではないが、ゴマスリ上手の部下は内心で上司を嫌い、馬鹿にしていることも多い。そのギャップが見える場合には女性たちから不評を買ってしまうことになる。

また、同じ場所に社長、部長、課長がいれば、立場が上の人ほどより多くのゴマを擂られる。その人が本当に有能かどうかや、その人のことが本当に好きか嫌いかはほとんど関係ない。あくまでポジションの問題だ。