しかし、今回の改正により、21年4月からは、物価よりも賃金の上昇が鈍い場合、賃金の変動を優先して年金額が決定する仕組みに変更になる。賃金よりも物価の伸長率が高い近年の経済状況が続けば、給付額が減額されるようになるというわけだ。

毎月10万円が不足、確実に老後破綻する

21年からはじまる年金の賃金スライド開始で実質の年金額は毎年目減りし、さらにマクロ経済スライドによって減額されることになる。

それだけではない。北村氏は現役世代にはさらなる厳しい状況が待ち受けていると指摘する。

「現在の年金制度は現役世代の年金保険料で引退世代の年金を支える世代間扶養の仕組みです。しかし、すでに2.3人の現役が1人の年金受給者を支えている構図になっている。このままでは年金財政が持たないので、現役世代の保険料を引き上げるしかありません。でも、現実的には難しい。そうなると1つの解決策は消費税を上げて年金財源を確保する。もう1つは現在65歳である支給開始年齢の引き上げ。第1ステップとして定年年齢を65歳に延ばしたうえで67~68歳に引き上げるのは間違いない。今45歳の人は確実にそうなると思います」

当然、その頃は年金額も目減りしている。ちなみに18年度の厚生年金月額は約22万円(夫婦2人)。北村氏は45歳が受給する頃には(現在の貨幣価値で)17万円程度になっている可能性もあると試算する。老後の生活費は総務省の家計調査では月約27万円。そうなると10万円不足することになる。

北村氏は最後にこう警告する。「何らかの形で毎月10万円を捻出できなければ間違いなく老後破綻が待っています。そのためには今からリタイア後を想定して個人年金に入る、あるいは奥さんが個人型の確定拠出年金に加入するなど、将来に向けた準備に着手すべきです。会社や国が面倒を見てくれる時代はもはや終わっているのです」。

北村庄吾(きたむら・しょうご)
ブレインコンサルティングオフィス代表
1961年、熊本県生まれ。中央大学卒。社会保険労務士・行政書士・ファイナンシャルプランナー。著書に『人生を左右するお金のカベ』(日本経済新聞出版社)など。
(撮影=大崎えりや 写真=iStock.com)
【関連記事】
"ほったらかし"積み立てが超貯まる理由
7500万円タワマン買う共働き夫婦の末路
介護施設に入るなら、いくら必要なのか?
「第二の人生」50代で夢に挑戦した3人
北欧の先進国に寝たきり老人はほぼいない