たとえば物価が0.5%上がり、マクロ経済スライド調整率0.9%を差し引くとマイナス0.4%になるが、この場合の年金額は据え置きとし、0.4%を次年度以降に繰り越し、物価が上がったときにこの分を含めて差し引くという仕組みだ。(図版参照)
このキャリーオーバーが導入された18年1月、厚生労働省は18年度の年金参考指標として物価の変動率はプラス0.5%、名目手取り賃金はマイナス0.4%となることから、年金額は据え置き。マクロ経済スライドによって、未調整となっている14~16年時のマイナス0.3%分を19年度以降に繰り越すことを発表した。
「わかりやすく言えば、仮にアベノミクスの物価上昇率2%の政策目標が実現しても、本来の調整率0.9%プラス未調整分の0.3%の計1.2%が差し引かれ、年金額は0.8%しか上がりません。平均調整率を1%とすると、2%の物価上昇率が10年続けば物価は20%上がりますが、年金は10%しか上がらない。つまり、年金が10%目減りし、今までと同じ商品を買うことができなくなります」(北村氏)
さらに、21年からはもう1つ、「物価・賃金スライド」の制度変更が行われる。冒頭の説明にもあった通り、これまで給付される年金額は物価や賃金の変動に伴って調整されてきた。物価が上がっても、その分給付額も上がるので、物価の変動にかかわらず、同じ商品が買えるメリットがあった。たとえば、現役世代の賃金が1%上昇すれば、年金額も1%上がる。仮に物価が上がっても賃金が下がる場合にはプラスマイナスゼロで据え置くことが決まっていた。