なぜ嘘を暴いてはいけないのか

取り調べにおいて相手が嘘をつくのは日常茶飯事です。しかしそこで嘘を暴いてはいけない。初期の段階では何食わぬ顔で、「そうかそうか、それで?」と先を促し、たくさんの嘘をつかせるのがコツです。それをすべて調書にとっておき、裏をとってつぶしていく。相手が言い逃れできないところまで証拠が揃って初めて、「これはおかしいじゃないか」と相手の主張を覆していくのです。

このように口を割らせるテクニックはありますが、基本的には自分の存在をかけて相手にぶつかるしかありません。相手はヤマアラシのように全身の神経を尖らせているのですから、小手先の演技で理解を示したところで見抜かれてしまいます。

ただし、演技をしたほうがいいときもあります。それは怒るとき。なぜなら本当に怒っている人間というのは、はたから見ると滑稽に見える。怒りの感情に支配された姿がまるで幼児のように見えてしまう。芯は冷静なまま、腹から声を出して一喝すれば、相手は震え上がります。

とはいえ人に本当のことを話してもらうには、やはり真摯に対峙するしかありません。そして試行錯誤を繰り返し、あきらめずに熱意をもって全身全霊でぶつかること。結局のところ、それしか方法はないのです。これはビジネスの世界でも通じることではないでしょうか。

▼嘘、黙り込み、泣き落とし、逆ギレ……こう対処する!
何を話すか
・教えを乞う
・自分の中の「悪」を開示する
相手を追い詰めるには
・嘘は話したいだけ話させる
心を動かすには
・相手のプライドを認める
大澤孝征(おおさわ・たかゆき)
弁護士
1945年生まれ。69年、早稲田大学法学部卒業、同年司法試験合格。72年、検事任官。東京、宮崎、横浜地検検事を歴任。79年、検事を退官し弁護士登録。
 
(構成=長山清子 写真=iStock.com)
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