歴代ウルトラマンの顔写真のカードで「神経衰弱」

いろいろなことをしたが、子供がとくに喜んでやったのはお手製のカードを使った「神経衰弱」。睦貴さんは当時、「ウルトラマン」が大好きだったので、書店で歴代ウルトラマンの写真が満載の図鑑を購入した。はるかさんはそのキャラクター(47種類)の「顔写真」をカラーコピーして、台紙に張り、5cm四方のカードを作成した。

現在、東大医学部3年の秋山睦貴さんの母親はるかさんはウルトラマン図鑑を使ってお手製カードを作り、一緒に神経衰弱ゲームをした。

「それを縦に3枚、横に3枚、計9枚並べて10秒間だけ見せてハンカチをかぶせます。並び順を再現させて、どれだけ正確にできるか競争したのです。好きなキャラクターということもあって、子供たちは集中して何時間も遊びます。子供の好きな遊びをするということも大切にしていました」(はるかさん)

睦貴さんはその頃、恐竜にもハマっていた。はるかさんは関連のDVDを見せたり、恐竜展に出向いたり、恐竜のフィギュアを買い与えた。すると、ただフィギアで遊ぶだけでなく、お寿司についているバランなどを使って、恐竜が住む世界を表現したジオラマづくりをしたり、積み木で大きな恐竜をつくろうとしたり。子供なりに遊びを発展させて、何時間も夢中で取り組んでいたという。

▼リミットは6歳「遊びが脳を発達させてくれる」

このように子供を遊ばせることにはある「狙い」があった。

学生時代、幼児教育について学ぶ機会があったはるかさんは、絶対音感、運動神経などの特定な能力については6歳くらいまでに臨界期(学習するのに適切な時期。感受性期とも言う)があると学んだ。

はるかさんは、この臨界期を自分なりに拡大解釈。もしかしたら、記憶力や思考力、発想力、応用力、集中力なども、この時期までは身に付けるのが容易なのかもしれないと考えた。そこでトレーニングとしてやってみたことが、睦貴くんの話す「夕食後の遊びタイム」だった。

「脳に刺激を与えると神経回路が発達します。その原理を踏まえ、いろんな遊びを取り入れました。トランプの神経衰弱をやれば、自然と集中力や記憶力が鍛えられます。積み木をすれば、イメージを形にしたり、どこに荷重すればバランスが取れるのかを試行錯誤する事で物理的な感覚などを養ったりできます。今やっている遊びは、脳を発達させていくと信じて、私も一緒に取り組んでいました」(はるかさん)

考えてみれば、子供が好む遊びの中には学習の土台を鍛える要素がたくさんつまっている。その事実に気づき、子供と「愚直に遊びを楽しんだ」というはるかさんは先見の明があったということだろう。

間違ってはいけないのは、ここで言う「遊び」とは、惰性的なテレビ鑑賞や、スマホのゲームなど受け身で行うものではなく、あくまで子供が主体的に取り組み、頭や体を使うものだ。