後半戦の共同声明への署名で形勢は一転した

トランプ氏は会議室に移動するまでの間、金氏を移動するよう促す動作をしたり、背中を触るなど軽いボディタッチを6回ほどし「懐の広さ」をアピールした。金氏はそれに抗うことなく、意外にも受け身を取ることで“圧”を相殺しようとする様子が見て取れる。トランプ氏から半歩下がり、年長者を敬うかのような様子を見せ、儒教国の指導者であることを印象付けている。

また、並んで座る場面ではトランプ氏のほうへ身を傾け「ミラーリング」をしている。ミラーリングは、コミュニケーションを円滑に進めたい場合に有効な手段の1つ。終始トランプ側の優勢で終わるかと思いきや、後半戦の共同声明への署名で、形勢は一転。

「会談を終え、ホテルの中庭を金氏とともに歩いてきたトランプ氏は『我々はこれからサインする』という発言をします。『サイン』と言及した途端、トランプ氏の上唇が引き上げられ、ほうれい線が一瞬、釣り鐘形になります。これは嫌悪の微表情。しかし、本会談・共同声明が、北朝鮮との持続的な対話と交渉のきっかけとなるだけに、これを拒否したいと考えているとは思えません。この場合の嫌悪は、共同声明の内容が自身の期待した水準を満たしていないため、消極的にサインする、不快感の伴うサインであるという感情の表れだと推測できます」

そして反対に、金氏の顔には明らかな勝利のサインが浮かぶ。4冊目の共同声明文にサインし終える場面だ。

「この瞬間、金氏の右側の口角が引き上げられますが、これは軽蔑を意味する微表情です。この場合の軽蔑とは敵対心ではなく、優越感と置き換えることができます。共同声明文を米国よりも北朝鮮に有利な内容にすることができたことについて、満足しているであろう心中が窺えます」

トランプ氏の威圧をのらりくらりとやり過ごし、自国側に有利な共同声明文の発表で勝利の笑みを浮かべた金氏と北朝鮮のしたたかな外交術が数々の表情と動作に集約されていた。ただ、トランプ氏も「共同声明文にサインし終えてもなお、眉間にシワを寄せ厳しい表情を崩さなかった」だけに、今後も米朝関係には一波乱ありそうだ。

(写真=時事通信フォト)
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