特許権、商標権、顧客リストなど無形固定資産も「のれん代」

買収価格から純資産額を引いた広義ののれん代の中には、無形固定資産が含まれている。これには、特許権やブランドを守る商標権のほか、ソフトウエア、独自技術、優良顧客リストも含まれる。広義ののれん代から無形固定資産を引いた額が、狭義の意味でののれん代である。

買収した企業の業績が振るわなかったり、自社の傘下でのマネジメントが思うようにいかないと、のれん代は毀損し、会計上は減損として決算書上で処理しなければならない。

その際、日本基準とIFRS(国際会計基準)のいずれかを選択する。一番大きな違いは減損対象の償却方法。無形固定資産はどちらの基準でも償却しなければならないが、狭義ののれん代は、日本基準では一括ないし最長20年かけて償却するが、IFRSはその必要がない。

いずれを選択するかは経営陣の判断に委ねられるわけだが、償却をしないでいいことから営業利益を減らさないで済むという理由で、国際会計基準を使う会社もある。ということは、M&Aを積極的に進めても損益計算書に影響が少ない。だが、買収がうまくいかなければ企業にとっては大きな負担になる。

 
小谷和成
株式会社日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門主席研究員
公認会計士。1987年、京都大学卒業後、旧三井銀行入行。旧中央監査法人などを経て2000年日本総合研究所入社。08年から現職。
 
(構成=岡村繁雄)
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