中小企業を経営する60歳以上のうち66.1%は「後継者不在」だという。日本全体の事業所の数をかけあわせると、約2000万人の雇用が潜在的な危機にあるといえる。どうすれば危機を防げるのか。ひとつは経営者に「廃業」ではなく「事業譲渡」を決断してもらうことだ。中小企業の「事業承継M&A」に取り組むFUNDBOOKの畑野幸治社長が、現状に警鐘を鳴らす――。
「事業を承継できる人材がいない」
この数年、中小企業で親族や従業員以外の「第三者への承継」が増えています。「中小企業白書2017年版」によれば、5年以内に承継した中小企業の内、第三者への承継は、39.3%。20年前は5.5%、10年前は10.9%だったので、着実に増えています。
親族や従業員のなかに「事業を承継できる人材がいない」という問題がある一方で、見逃されている事実があります。大企業のM&Aとは異なり、中小企業のM&Aは、従業員の雇用がそのまま維持されるなど、友好的なM&Aになりやすいという点です。
中小企業は株式を非公開としているケースがほとんどです。上場している大企業では、M&AでTOB(公開買い付け)のような「敵対的買収」が行われるケースがあります。大株主になってしまえば、従業員の意向を無視して、リストラや資産売却を進めることができます。
しかし非公開企業であれば、いくら買収を希望しても、譲渡企業の株主が納得しなければ、M&Aは成立しません。「従業員の雇用を維持してくれ」と約束を取り交わすこともできます。
これまでは、後継者がみつからないという理由で、「廃業」という選択肢を選ぶ経営者が少なくありませんでした。しかし廃業は従業員や顧客、仕入先などに影響を与えます。結果的には日本経済全体に悪影響を及ぼすとも考えられるはずです。
このため私はFUNDBOOKという企業で、中小企業を対象にした「事業承継M&A」の事業に取り組んでいます。多くの中小企業は、事業承継の問題に早期に取り組む必要に迫られています。いまどんな状況にあるのか。大きな課題は以下の3点です。