日本の中小企業が抱える3つの課題

1点目は、急速な少子高齢化に伴う日本市場の縮小です。日本では現在、少子高齢化が進んでいます。このままでは2050年までに人口は3分の1の9708万人になると予測されています。つまり、現在の市場が3分の2になるのです。

2点目は、後継者問題の深刻化です。日本の起業率は5%程度にとどまっており、経営者の平均年齢が上がりつづけています。1998年には56歳だったボリュームゾーンは2016年に66歳となっています。一方で、帝国データバンクの調査によると60歳以上の経営者のうち66.1%が「後継者不在」と回答しています。現在70歳前後の「団塊の世代」が、これから次々と引退していきます。そのとき廃業を余儀なくされる中小企業が続出する恐れがあります。

3点目は、グローバル化に伴う競争の激化です。日本市場の縮小を予想し、大企業は数十年前から着実かつ積極的に海外市場を開拓してきました。たとえばキッコーマンはしょうゆを海外で売るために、1974年に米国で工場をつくっています。一方、中小企業の海外進出は思うように進んでいません。

今後の企業経営はこれまで以上に複雑性が高く、資金的な体力が必要になってくると考えられます。ところが日本の99.7%を占める中小企業の大半は、その準備ができていません。規模が大きく、成長意欲のある第三者に事業承継を行うことは、日本経済にとって重要な課題だと考えています。

企業の大量廃業で損をするのは誰か

もし中小企業が大量廃業に追い込まれれば、最も深刻な影響を被るのは地域経済です。『中小企業白書2016年版』によれば、日本の中小企業の企業数は380万社。それに前述の後継者不在率の66.1%をかけると、約250万社の企業が後継者不在と推計できます。中小企業の平均従業員数は8.8人となるので、これから30年の間に、潜在的には2210万人の雇用が危機にあるといえます。これは日本の労働人口の半分に達する数値です。