「エルメス」をハサミで切った子供に母が言ったこと

ロボット博士として知られる千葉工業大学未来ロボット技術研究センター所長、古田貴之さんに聞いた幼少時のエピソードも印象的だったと、菅原さんは語る。

古田さんは小さい頃、「鉄腕アトム」の天馬博士を見てロボット博士に憧れていたこともあり、当時からモノを分解するのが好きだった。家にあった時計やラジオなど、手当たり次第に分解して遊んでいたそうだ。ところが、そんなある日、事件が起こる。

写真はイメージです(写真=iStock.com/kyoshino)

「あるとき、お母さんが大切にしていた(高級ブランドの)エルメスのスカーフに興味を持ち、なんとハサミでじゃきじゃき切ったそうなんですね。その光景を目撃したお母さん。内心、大きなショックを受けたはずですが、怒ったり叱ったりせず、こう息子に言ったそうです。『どんどん切っていいわよ』。このエピソードを、父母を対象にした講演などで披露すると、会場がどよめきます(笑)。古田さんは『今はエルメスのスカーフが高価であるとわかるだけに、母にとても感謝している』『今の自分があるのは、いつも自分のやりたいことを応援してくれたお母のおかげ』と話していました。また、講演後、『私も古田先生のお母さまに少しでも近づけるよう、子どもの個性を大切にしていきたいと思いました』といった感想をいただきます」(菅原さん)

▼「分解好き」の子はロボット博士になった

「個性」を伸ばすということは、その子がやりたいことや興味あることを引き出すこと。同じ屋根の下で育つ兄弟姉妹でも異なる「個性」を持っているから、親はそれぞれに適したアドバイスをしたり、得意なことや興味を持ったことを認め、サポートしたりして、自信を持たせる。そうした「成功体験」がその後の人生にプラスの効果をもたらすのではないかと、菅原さんは言う。

前出の古田さんは“分解好き”という個性があったからこそ、いろんなモノの仕組みを知り、モノを作ることへの興味が膨らみ、今やロボット研究者の第一人者として大活躍しているのだ。