日本では「アスリートは酒を飲んではいけない」という風潮があるのを感じます。もちろんお酒を飲むにしても限度はありますが、大切なのは自分に合っているか、合っていないかの判断です。もしフランスに来たばかりの頃、ワインを飲んで、コンディションやパフォーマンスが低下したのであれば、僕は「アルコールは自分に合わない」と判断して、いまのように飲んでいなかったように思います。

撮影=千葉格

気持ちの切り替えスイッチを持つ

海外に来て僕自身が大きく変わったと思うのは、気持ちの切り替えがスムーズにできるようになったことです。

日本では、気持ちの切り替えがうまくできず、自分のミスで負けた次の試合は暗い気持ちを引きずっていました。また、気弱な性格が出てしまい、試合中ですらミスを引きずって、次の判断が遅れるなんてこともたくさんありました。正直、そんな自分をどうにかしたいと悩んでいたのも事実です。

そんな悩みを抱えつつ、海外初挑戦でハノーファーに移籍したときのこと。

ある試合で相手チームに好き勝手にやられて、ひどい負けた方をしたことがありました。海外の強豪チームと戦うとこんなにも個人の力の差を見せつけられるのかと、僕は正直へこんでいて、その気持ちを引きずったままでした。

しかし、チームメートのブラジル人選手は、次の日には何事もなかったかのようにケロッとした顔で練習に来ていたのです。

彼らはポジティブ思考で、とにかく切り替えが早いし、練習や試合にネガティブな感情を絶対に持ち込まない。この姿勢は見習うべきだと思いました。

それ以来、落ち込んだとき、気持ちが乗らないときにはどうやって次に向けて切り替えたらいいのか、チームメートの行動をつぶさに観察して参考にしていきました。

そうして、僕は切り替えのためのルーティンをつくることができました。メンタルがそこまで強くない僕には、自分に暗示をかけることで無理やり切り替える思考にするスイッチのようなものが必要だったのです。

その考えから生まれたルーティンが「握手」です。

試合でどれだけ自分が良いプレーをしても、逆に悪いプレーをしても、チームの結果が良くても悪くても、ロッカールームに引き上げてきたあとは、選手、スタッフを含めて1人ひとりと必ず握手を交わすことをルーティンとしました。