「廃棄や改竄の背景に首相への配慮」と読売
読売社説はこう指摘していく。
「旧大蔵省時代の1998年に起きた『接待汚職』以来の深刻な不祥事である。大規模な処分を実施したのは当然だ」
「佐川氏は国会答弁で、問題の国有地売却に対する政治家の関与を否定し、交渉記録は廃棄したと明言していた。決裁文書には、安倍首相の昭恵夫人や複数の政治家の名前が記載されており、佐川氏らは、それらを削除した」
「安倍首相は、自らや夫人が取引に関与していた場合、辞任すると国会で答弁した。廃棄や改ざんの背景に、首相答弁への配慮があったと見られても仕方がない」
大規模な処分といえるかは疑問だが、処分は読売社説の指摘通り「当然」だ。「首相答弁への配慮」という指摘もうなずける。
「扱い」をみても、読売社説だけが異例
さらに読売社説はこれまでの麻生氏の対応と今後の続投に触れる。
「麻生氏は、改ざんについて『財務省全体で日常的に行われているわけではない』と述べ、組織ぐるみではないとの見解を示した」
「理財局トップから幹部、職員へと、文書の廃棄や改ざんの方針が伝えられ、実行されていった。これを組織ぐるみと言わずして、何と言うのだろうか。麻生氏は認識を改めるべきだ」
「麻生氏は財務相にとどまるのなら、先頭に立って組織風土の刷新に取り組まねばならない」
読売社説が指摘するまでもなく、今回の改竄はだれが見ても組織ぐるみそのものである。新聞の社説として麻生氏の発言に反論して当然だ。
しかし読売社説は冷めて見える。どこかぱっとしない。どうしてなのか。
理由は簡単だ。本気で安倍政権の非を正そうとする気がないからだ。本来、麻生氏の続投に対しても「組織風土の刷新」ではなく、引責を促すのが筋だ。
社説の扱いをみれば、違いは一目瞭然だ。全国紙のうち朝日新聞と毎日新聞は、文書改竄問題を1本の大きな社説で扱っている。産経新聞と日経新聞はともに半本ではあるものの、1番手の社説のテーマとして取り上げている。これに対し、読売だけは半本の2番手扱いなのである。ちなみにいずれの社説も6月5日付である。
「麻生氏は速やかに辞任すべきだ」と朝日
読売に対し、朝日社説は歯切れよくこう書き出す。
「国民共有の財産で、歴史の記録でもある公文書を改ざんし、廃棄する。国民を代表する国会でうその答弁を重ね、立法府による行政監視の役割を骨抜きにする。その問題の重大性に、この政権が真摯に向き合っているとはとても言えない」
朝日社説は財務省が発表した「改竄問題の調査報告と処分」についてこう書き進める。
「責任を官僚組織の一部に押し込め、問題が政権全体に及ぶのを回避しようという狙いは明らかだ。国有地の大幅値引きの経緯は今回の調査の対象外であり、疑惑の全容解明には程遠い。これでは、失った信頼を回復するどころか、政治不信に拍車をかけるだけだろう」
さらに「この問題を軽視する発言を繰り返してきた麻生氏の下で、行政への信頼回復や財務省の抜本的な立て直しが実現できるとは到底思えない。麻生氏は速やかに辞任し、新しい大臣の下で財務省は出直すべきである」ときっぱりと言い切る。
実に分かりやすい。