19年4月からIT専門の総合職コースを新設

――それぞれの領域で、今までとは違う高い専門性を持った人材が必要ということですね。

スピード感をもって先端IT技術を取り込むためにイノベーション開発室を設置しました。今後に備えてどういう人材を採用し、どのように育成していくのか、あるいは意思決定を速くするための予算の権限や使い方も見直していく必要があります。これまでの当社の価値観を含む確立された伝統的なやり方でやっていてはダメだということです。中途採用はもちろんですが、19年4月の総合職採用からIT専門人材のコースを設けています。私の思いとしてはイノベーション開発室に日本生命の価値観を飛び越えた起爆剤の役割を担ってほしいと期待しています。

ただしプロフェッショナルといっても専門バカになってもらいたくない。その領域のプロではあっても別の領域のプロを尊敬し、全体の動きを把握できるジェネラルな知識・能力が求められます。高い専門性+ジェネラルです。

その前提として日本生命が大事にしているのは、長期的視野を持ちフェース・ツー・フェースの重視とカスタマーファーストというフィロソフィー、グループの一員としてのアイデンティティー、目標達成のスピリットです。この3つの価値観を失ってはいけません。

――人材育成も大事です。とくにOJT(職場内教育訓練)における上司や管理職に求められる役割とはなんでしょう。

私も41年間の職業人生でいろんな人を見てきましたが、正直、反面教師みたいな人もいます。その中で気づいた上司に求められる役割が5つあります。

1つ目は目標を意識させ、こだわらせる。どんな小さな仕事や指示でも、最後まで部下が諦めないようにフォローしていく。育成の基本です。2番目は意識的に意見を言わせて最後まで聞く。上司自身がわかっていることでも部下に質問し、話をさせる。途中でバカなことを言っているなと思ってもチャチャを入れないで我慢して話を聞く。相手に納得してもらえる論理的な話し方や意見発信の訓練になります。3番目は思い切って任せる。これは非常にリスクがあり、難しいが、上司がリスクを取る姿勢を示さないと人は育たないというのが私の信条です。

4番目は人との出会いを促す。いろんな価値観と出会うことで人は育ちます。社内外を含めていろんな人との接触の機会をつくる。夜の飲みニケーションも重要です。最後の5番目は、現場目線を持たせる。当社には約5万人の営業職員がいますが、保険の営業はお客様にお勧めしても断られることから始まっていく仕事です。日々どのような思いで仕事をしているのか部下の声に耳を傾け、寄り添っていく姿勢が大事です。