どれだけクライアントの役に立てるか

第5条 相手の好みに合わせる

かつて依頼をされて「サラリーマン 一冊本を書いてみようよ」というセミナーの講師をやったことがある。その時に専門性も高く筆力もあるのに、なかなか本の企画が通らない会社員がいた。あるビジネス誌の編集長に尋ねると、やはり読者に興味を持ってもらうといった視点が足らないので掲載できない原稿が多いという反応だった。

会社員から転身して人事コンサルタントで活躍している人は、「高い専門性はそれほど必要ではなく、どれだけクライアントの役に立てるかがすべてだ」と言い切る。

これは定年後に組織で働く場合や地域で活動する場合でも共通している。地域活動の取材で、過去に勤めていた会社の役職をひけらかして周囲が嫌がっているという話は何度か耳にした。相手が求めているものを見極める感性が大切なのである。

第6条 自分を持っていく場所を探す

定年後に何か新しいことを始めるとすると、今までの自分を変えなければならないと思う人は少なくない。また人には転身願望があるので、「○○すれば、××ができる」などとそれをあおるような書籍や言説も少なくない。

しかし、いきなり自分自身を変えることはなかなか大変だ。私のケースでは、会社の仕事中心に働くことから、会社員とフリーランスを並行して働く形に移すだけでも相当な対応が必要だった。

自分を変えようとするよりも、ありのままの自分をどこに持っていけばよいのかを検討する方がうまくいく。例えば、ある50代社員は、介護施設の運営をサポートしているNPOで週末に総務や経理の手伝いをしている。そのNPOでは、介護士や福祉士はいても、総務や経理の仕事をきちんとできる人がいないので彼は非常に重宝されている。同時に本人もやりがいを感じている。

ある電機メーカーの社員は、自分が専門としてきた技術がもはや最先端ではなくなっていたが、彼の技術を求める中小企業に移れば、まだまだ活躍できる場があったと語る。

自分の力量を向上させることも大事ではあるが、自分が役立つ場所を探すという行動にも大いに意味があるのだ。

(写真=iStock.com)
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