なぜ低所得層に「肥満」が多いのか

かつては裕福の象徴であった肥満だが、今では「稼げない男」「出世できない男」といった貧しさにつながる「貧困の象徴」といっても差し支えない。厚生労働省の調査では、「肥満者の割合は男女とも低所得層のほうが高い傾向にあり、年収600万円以上の男性の肥満率は25.6%であるのに対し、年収200万円未満の低所得者38.8%と13.2ポイントの差がある」(「平成26年国民健康・栄養調査」の要旨)と指摘している。今や太っていると低所得者とみなされる傾向にある。

それではビンボーだと、なぜデブになるのか。その一番の原因は食生活にある。前述の厚労省の調査でも、「低所得世帯は高所得世帯に比べて、野菜類や肉類の摂取量が少なく、逆に穀物の摂取が多く、栄養バランスが取れていない」(要旨)と指摘している。さらに2018年3月、滋賀医科大学が発表した研究報告では、摂取エネルギーに占める炭水化物の割合は、世帯年収600万円以上の男性が58.6%なのに対し、200万円未満の男性は61.1%と年収が低いほど増えた。報告では、「安価なもので腹を満たそうとすると炭水化物に偏るのでは」と推測している。

生まれながらにして肥満体質の人もいるが、肥満の原因は炭水化物を摂取しすぎることによる。安くて美味しく感じる食べ物の多くは炭水化物でできている。経済的に恵まれていない人ほどご飯やパンといった炭水化物中心の食事に偏りやすく、とりすぎは肥満や生活習慣病を招きやすいから控えようとしても、お金の余裕がないことや自制心が働かず、つい手が出てしまう。またストレスを発散するために食に走る人も少なくはない。

稼ぎが少なく収入が低いことには社会状況も影響するが、仕事ができないからという面も大いにある。仕事ができない人には、自己管理ができていない人が多いのも事実。肥満の人が出世できない理由も、「自分の体もコントロールできないのに、部下を的確に動かすことはできない」と判断されることにある。