日本のガン死亡者数は着実に右肩あがり。2006年は32万9314人にも達した。

その中で、今後も増加し続け、罹患率で20年には肺ガンに次いで第2位になると推測されているのが「前立腺ガン」である。

前立腺ガンは、男性特有の臓器の前立腺にできるガン。前立腺は膀胱の出口付近に尿道を包み込むようにしてあるクルミ大の臓器で、精液の一部の精子の運動を活発にする前立腺液を分泌している。

前立腺ガンの治療には「手術」「放射線療法」「内分泌(ホルモン)療法」「化学療法」「HIFU(高密度焦点式超音波療法)」などがある。

その放射線療法の中のひとつ、「IMRT(強度変調放射線治療)」が、2008年4月から保険適用となり、注目を集めている。

放射線療法には「外照射療法」と「組織内照射療法(小線源療法)」がある。小線源療法は前立腺に埋め込んだシード線源から放射線が約1年出続けて、ガンを叩く治療法。一方、外照射療法は体の外から放射線を照射する治療法である。

小線源療法は人気だが、「早期ガンで悪性度が低い」「前立腺が大きくない」「排尿状態があまり悪くない」といった、適応条件を満たす必要がある。その条件をクリアできないと、外照射療法となる。

従来の外照射療法では同じ方向から放射線を照射するので、正常組織にも同じ強さの放射線がかかってしまう。

だが、IMRTはより強力な放射線をガン組織に照射できるのである。つまり、治療効果をあげて副作用を減らす期待の治療法である。

IMRTの登場にはコンピュータの開発が大きく関与している。

コンピュータとCT検査が進歩すると、CTの画像からバーチャルな前立腺の3次元画像を作り出すことができる。そして、どこにどれだけの放射線をあてるか事前に決めて治療できる。これが「3次元原体照射」である。

IMRTはこれをさらに進化させ、5方向から放射線を照射する。そのとき、照射中に数・幅の金属板が動くことで、放射線に強弱がつくのである。それによって、必要な部分により効果的に放射線が外照射できる。

従来の放射線照射は上限が70グレイだが、IMRTは78グレイ照射が可能。そのため、週5日間の照射を8週マイナス1日で39回照射する。

効果的に照射されることで副作用は少ないものの、10~20%程度の直腸出血がある。

それでも「根治療法である」「体にメスを入れない」「悪性度の高いものにも対応できる」といったメリットが大きく、人気となっているのであろう。

【生活習慣のワンポイント】

前立腺ガン増加の大きなポイントは“食生活の欧米化”である。欧米、特に米国で日本料理が人気となっているのを思うと、もっと日本人に日本食がいかに“健康食”かを知ってもらいたい。

その点から、「脂肪の摂取量を控える」「食物繊維を十分に摂る」「野菜を1日400グラム摂る」のほかに、次の点を徹底することをお勧めする。

●大豆・大豆製品を積極的に摂取しよう!

大豆をはじめ大豆製品には、注目の成分が数多く含有されている。

女性ホルモン様作用のあるイソフラボンは、筑波大学医学部などのグループが行った動物実験で、前立腺ガンを抑えるという結果がでている。

このほか、大豆にはビタミンB、B、E、食物繊維、そして抗酸化物質のフラボノイドやテルペンなども多く含まれている。大豆製品の納豆に含まれているナットウキナーゼにも、抗ガン作用が認められている。

大豆、みそ、納豆、豆腐、厚揚げ、高野豆腐など大豆製品は数多いので、1日2~3回は口にするのがいいようである。