中国政府は20社程度に絞り込む方針
一方、EVの“選択と集中”策です。中国政府は、2009年6月の「新エネルギー車生産企業および製品参入管理規則」によって、EVを含む新エネルギー車(NEV)の製造事業について、一定の参入規則を設けました。2015年6月の「電気乗用車企業の新規設立に関する管理規定」では、純電気乗用車メーカーについての追加的な参入要件も設定されています。
そして2017年1月、2009年参入規則を改定し、新エネルギー車(NEV)の定義と範囲が明確にされるとともに、安全面での参入要件の引き上げ・検査措置の整備・法的責任の強化などがほどこされました。要件に関わる審査を通過できないNEVメーカーは、助成金受給資格の失効などにより優遇措置を受けることができなくなっています。
実際、NEVの適合違反によって行政処分を受けた自動車メーカーも出てきています。さらに、財政負担の軽減や保護主義への懸念などもあり、中央・地方政府によるNEVメーカーへの助成金が段階的に廃止される可能性もささやかれています。
中国でEVメーカーが乱立するなか、中国政府は同メーカーを20社程度に絞り込む方針を明らかにしました。独メーカーでもEVライセンス認可を取得するのに苦労しており、独政府とともに主要メーカーが水面下での工作を進めているとも伝えられています。中国政府は、中国資本の完成車メーカーを手厚く支援し、国際競争力を持つNEVメーカーを育成するとともに、次世代自動車産業での競争を優位に進めたいという意向もあるようです。
外国資本でリスト登録を果たした企業はない
中国資本の自動車メーカーや電池メーカーへの手厚い優遇策も、あからさまと言わざるをえません。NEVメーカーが中国政府から助成金を受け取るためには、「新エネルギー車普及応用推薦車リスト」(2017年1月公布)に載らなければなりません。
同リストに載るには、「ホワイトリスト」登録企業(バッテリー模範基準認証の取得企業)から電池を調達することが条件とされています。しかし、現時点では、大連で車載用リチウムイオン電池の工場を稼働させたパナソニック、韓国のサムスン電子やLG化学をはじめ、外国資本で同リストに登録を果たした企業は存在しない状況です。
中国の自動車専門誌『汽車商業評論』が、興味をひく集計をしています。それは、中国での2017年上半期の販売実績を“NEV法”にあてはめて、各自動車メーカーの「新エネルギー車(NEV)ポイント」を計算したものです。
それによれば、基準値以上の「NEVポイント」を稼いで他社へ転売できる「黒字」を出したのは「アポロ」のパートナーであるBYD(比亜迪汽車)、NEV販売の伸びが最近著しい北京汽車、ボルボなどを傘下におさめ国際戦略に長(た)けた吉利汽車など数社のみ。一方で、フォルクスワーゲン、トヨタなどをはじめとする外国資本や、ガソリン車での市場シェアが大きい国営の自動車メーカーは、「NEVポイント」を他社から購入しなければならない「赤字」に陥っています。