自動車産業は国際政治と表裏一体
NEV法は、中国政府の「電気自動車(EV)化」(NEV化)への確固とした姿勢が見える一方で、既存自動車メーカーや外資メーカーにとっては相当厳しい義務が課された格好になっています。自動車メーカーのなかには、次世代自動車産業でのNEVの重要性を認識し、ガソリン車販売を数年後には廃止するなどの野心的な経営計画を掲げている企業もあります。
しかし、NEV法の基準をクリアすることさえも困難な状況で、その実現可能性は疑問視もされています。一方、新興自動車メーカーは、中国EVブームの流れにのって多額の出資が集まる傾向にはあるものの、健全な収支計画が見通せないなど、まだまだ不透明と言わざるをえないでしょう。
そうしたなか、引き続き、中国政府の政策展開やそれに合わせたNEVメーカーの動きには注視する必要があります。自動車産業は国際政治と表裏一体です。中国のEVシフトが次世代自動車産業の変革・再編、ひいては日本の自動車メーカーにも大きな影響を及ぼすことは間違いないでしょう。
ライドシェアを完全に合法化したワケ
先に述べた「自動車産業の中長期発展計画」(2017年4月)・「乗用車企業平均燃費・新エネルギー車クレジット同時管理実施法」(通称“NEV法”、2017年9月)・「次世代人工知能の開放・革新プラットフォーム」(2017年11月)は、中国政府の自動車産業政策を特徴づける三つの重要な政策コンテンツです。
さらに、もう一つ、触れておかなければならない重要な政策があります。それは、2016年7月公布・同年11月施行の「インターネット予約タクシーの経営サービス管理暫定法」です。ひと言でいえば、ライドシェアを認める法律です。定義によっては、白タク行為とも捉えられかねないのがライドシェアです。世界では軋轢を生みながらもそのサービスが拡大するなか、中国は、法律を制定することによって、ライドシェアを完全に合法化したのです。
同法律のなかでは、ライドシェア会社は「網約車プラットフォーム企業」と呼ばれています。“網約車”とはインターネットで予約するタクシーのことです。「網約車プラットフォーム企業」は、政府当局から経営許可を取得すること、インターネット情報サービス企業としても届出をすることが定められています。料金などは政府が決定すること、中国国内にサーバーを置くこと、顧客情報と自動車の走行データは2年間保存すること、採算割れとなる営業を禁止すること、といった条件も付けられています。
以上のように、中国の自動車産業政策は、電気自動車(EV)を含む新エネルギー車(NEV)、人工知能(AI)、自動運転、さらにはライドシェアのようなサービスもカバーしながら展開されています。