応援行為がブランド活性化のきっかけになる
顧客からの応援は、企業にとって3つのメリットがあると考えられます。1つめはマーケティング効果です。広告宣伝効果はもちろんのこと、再購買や市場創造などにもつながります。
2つめは経営心理効果です。特に製造業の場合、消費者の声を直接聞くことは思ったほど少なく、それだけに応援の声が届くことは、社員のモチベーションアップにつながります。
そして3つめは文化的効果です。例えば、岩手県花巻市のマルカンデパートの6階にあった大食堂は、長い間地域に愛されてきましたが、建物の老朽化と耐震性の問題により、16年6月に閉店しました。しかし、地元の人たちの寄付やボランティアなどのさまざまな応援により、17年2月に復活を果たしました。このように応援行為は、文化としてのブランドを保持・活性化させるきっかけにもなります。企業にとっては、目先の利益だけではなく、より長期的なメリットにもつながるといえましょう。
ただし応援といってもさまざまなタイプがあります。多数のケースを眺めた結果、次の5類型に分類できました。
(1)崇拝型ブランド
ブランドに対する憧れや尊敬などの気持ちから応援されているタイプ。トップランナーとして、他者の追随を許さない孤高の姿勢にファンは魅了されます。
〈例〉マッキントッシュやアイフォーンなどを生んだ「アップル」、オートキャンプ市場を牽引した「スノーピーク」など。
(2)愛着型ブランド
「昔からの付き合い」「幼い頃・若い頃の思い出」「地元」「馴染み」だからといった理由で応援されるタイプ。
〈例〉崎陽軒が1954年に横浜駅構内で販売を始め、変わらないスタイルで横浜名物となっている「シウマイ弁当」、ポーターの「吉田カバン」など。
(3)同志型ブランド
既存の業界秩序や利権構造にアンチを唱え、それらと果敢に戦う姿勢が共感を得るタイプ。
〈例〉徹底したカスタマーファーストの姿勢により地域で圧倒的な支持を集める長野市の「中央タクシー」、倒産・廃業の相次ぐ日本人形業界で、オリジナリティの高い雛人形を製造販売し、高い人気を誇る「ふらここ」など。
(4)共観型ブランド
企業と顧客が同一の世界観を共有し、「一緒に楽しむ」ことでファンを拡大させるタイプ。
〈例〉ユニークな名称やデモ営業で人気を博す「筑水キャニコム」など。
(5)賛助型ブランド
光る要素はあるが未完成であり、脆弱であるがゆえに応援されるタイプ。
〈例〉独特の個性を持った番組づくりで躍進する「テレビ東京」、多数のオーナーバーテンダーたちの支援によって、秩父産のウイスキーを造り、世界最高賞を受賞した「ベンチャーウイスキー」など。