日経は「不祥事続出でも審議が筋」と野党批判から始める
次に日本経済新聞の社説(4月24日付)を見てみよう。
「一連の不祥事は行政への信頼を揺るがしており、真相解明や責任追及は当然だ。だからといってそれが法案の審議などをすべて欠席し国会を長く空転させる理由にはなり得ない」
政府の対応に反発して国会審議を拒否している野党を批判する。見出しも「不祥事続出でも国会は審議するのが筋だ」と明確にそこを突く。
朝日社説とは正反対の主張である。しかも経済専門紙の日経新聞が他紙に先駆けて国会空転の問題を社説のテーマに選ぶのも珍しい。
日経社説は一連の安倍政権の不祥事を挙げた後、こう書く。
「安倍政権では森友、加計の両問題に加え、海外に派遣した自衛隊の日報の扱いなど国民の信頼を裏切る失態が続く。報道各社の世論調査では内閣支持率が急落した。一連の疑惑の解明と再発防止に向け、政府・与党が重い責任を負っているのは言うまでもない」
それなりに政府・与党の責任は認めてはいるのだが、まだ社説の中盤だ。この後の書きぶりが気になる。
与野党双方に責任を求める日経は筋が通っている
そう思って読み進むと、次に「一方、今国会は重要法案の審議が軒並み遅れている」と指摘する。
そのうえで日経社説は審議すべき重要法案をひとつずつ挙げていく。
「生産性向上をめざす働き方改革や規制改革の関連法案は、与野党で政策論議を深めて早期に成立させる必要がある。成人年齢の18歳への引き下げや相続制度の見直し、受動喫煙対策の強化といった国民生活に密着した法案も多い」
「日本が主導して11カ国が署名した環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案や関連法案も今国会中に可決し、早期の発効に道筋をつけるべきだ。2国間の通商交渉を重視する立場を鮮明にして譲歩を迫っている米政府に対する、日本としてのメッセージにもなる」
日経社説は最後にこう主張する。
「政府への信頼は民主主義国家の土台だ。だが大きく変化していく世界のなかで、内向きの論争ばかり続けている余裕はない。国家的な課題と不祥事への対応を、ある程度は切り分けて論議していく必要が、与野党にはある」
この日経社説の結論には賛成だ。野党に国会空転の責任を問うのではなく、与野党に協力を求め、不祥事の真相解明と国家的課題の双方を国会で議論していくべきだ。国会の審議はだれのために行われるのか。間違いなく、すべての国民のために国会審議は存在する。