目指すはVRで、アカデミー賞獲得

【田原】いまはもう完成して、ユーザーに売っているんですか?

【小島】17年1月から売ってます。

【田原】1台いくらですか?

【小島】599ドルです。

【田原】6万円強。安くはないですね。

【小島】最初はネットカフェで気軽に体験してもらえればと考えています。16年に、ネットカフェ支援事業を展開するテクノブラッドと提携。彼らがネットカフェ向けに提供しているコンテンツのプラットフォームに、FOVEを採用してもらいました。いま全国のネットカフェで数千台が導入されています。まずはネットカフェで数百円で遊んでもらい、VRのおもしろさを知ってほしいです。

【田原】どのくらい売れていますか?

【小島】個人ユーザーとネットカフェ合わせて数千台の後半くらいです。

【田原】本社は米国のサンフランシスコだそうですね。どうしてですか。

【小島】世界で勝負をしたいんです。じつは日本で売れているゲームのほとんどは世界で売れていません。世界で勝負するにはその理由を明らかにする必要がありますが、日本であれこれ考えているだけでは、理由を解明するうちに人生が終わってしまう。だからまず世界に行ってから、その理由を考えようかなと。

【田原】この秋葉原のオフィスは?

【小島】ハードの開発部門は日本です。機械はやはり米国より日本が強いので。じつはいまソフトウェアのチームもいったん日本に戻しているのですが、また米国に出す予定です。

【田原】従業員は、全体で何人ですか。

【小島】いまは30人弱です。競合他社は600人くらい。みんなオタクで、好きなことには20人分くらいの情熱を持って頑張っちゃう人たちです。

【田原】そうはいっても、30人対600人ではリソースに圧倒的な差があるでしょう。競合にはどういう戦略で勝とうとしているんですか。

【小島】お金のないベンチャー企業が世界に普及するハードウェアを作るのは大変だと実感しています。このまま私たちの力だけでやっても、おそらく1万台くらいの小さなパイにしかならない。なので、いまは戦略を転換して、私たちのコアな技術を競合他社のヘッドセットにライセンスすることを検討しています。数百万台のヘッドセットに私たちの技術が使われたら、より多くの人に楽しんでもらえるかなと。

【田原】収益の柱はライセンス料ですか。ソフトは儲けになりませんか?

【小島】そうですね、コンテンツは主力ではないです。ただ、日本のVRのコンテンツ力は世界でもトップ3に入るくらいに強いので、活かさない手はない。日本のいいコンテンツと組んで、中国など海外のマーケットを攻めることも考えています。