生徒を成長させる「アクティブ・ラーニング」の中身

高専で効果を発揮しているのはアクティブ・ラーニング。答えのないものにチャレンジするなど、自ら問題を設定し、解決する力をつけることを目的としたカリキュラムで、受験中心の中高教育に最も欠落した部分だ。

社会に出れば自ら問題を探してその解決法を見つけ出さねばならないし、最先端の技術を常に素早くキャッチアップしなければならないが、高専では主体性が要求されるアクティブ・ラーニングによって、課題を発見・解決したり、最先端の技術にすぐさま対応できる基礎的な素養を身につけられる。

教育の世界においても、グローバル化は非常に重要なテーマだ。これからは自分の意見や考えを主張し、イエス・ノーを明確にし、ディベートができる人材でないと生き残っていけないだろう。日本的な「言わなくてもわかる」コミュニケーションは、海を越えれば通用しない。

毎年100人以上が海外留学へ

2014年、茨城高専と本校が全国51高専の中でグローバル高専モデル校に選定された。毎年100人以上が、オーストラリアやベトナム、シンガポールなどへ語学研修や海外インターンシップなどで留学している。帰国した学生の成長ぶりが同級生を刺激し、いい波及効果も生んでいる。大学受験や就職活動の負担が少ない分、高専生には余裕があるのかもしれない。

アクティブ・ラーニングとグローバル事業は、新しい技術や知識、未知の世界へ飛び込んだときの対応力や気概を育てており、企業ニーズとも繋がりが深い。基本的に日本人は勤勉なので、うまく育てればすごく伸びる。頭が柔らかく吸収できる時期にさまざまな経験を積むのは非常に重要だ。教育に重きを置き、高専のようなシステムをもっと大きく広げ、将来を見据えて発展していくべきだとも思う。

本校は、高専ロボコンの2016全国大会で2年連続ベスト4進出を果たした。また多くの高専では小・中学生向けのイベントを開催している。ロボコンやイベントは、子どもたちを高専に振り向かせるいいきっかけにもなるだろう。ぜひ足を運んで高専を体験させてほしい。

“アクティブ・ラーニング”の高等専門学校はいい
笠井秀明(かさい・ひであき)
明石工業高等専門学校長
1952年、大阪府生まれ。大阪大学工学部卒業。81年工学博士。99年大阪大学大学院工学研究科教授。応用物理学専攻。2015年より現職および大阪大学名誉教授。
 
(構成=篠原克周 撮影=浮田輝雄)
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