目標未達成でも、前を向ける人の特徴

しかし職場でいちいち「よくやった、グッジョブ!」と口に出していたら、周りから不審な目で見られかねない。そこでToDoリストの活用を試してみてはどうだろうか。

仕事を始める前に、これから進める手順を細かく書き出す。慣れてくれば、ポイントを押さえたリストができるようになる。やる気スイッチをオンにすると同時に、段取り力を高める効果もある。そして実行したら、単に「チェック」を入れるだけでなく、「よくできました!」とリストに花マルをつけて自分自身を褒める。これだけでも脳は快感を得て、線条体はさらに活性化する。

このように説明すると「自分に褒められて本当にやる気が出るのか?」と疑問を持つ人もいるだろう。篠原教授は次のように解説する。

「脳のドーパミン神経系は騙されやすいんです」

どこかをぶつけたときに「痛いの痛いの飛んでいけ」と言いながら手でさする。こういう“おまじない”が効くことはドーパミン神経系の実験で証明されているという。

“報酬条件づけ”はパフォーマンスと達成感を高める一方で、実は思いがけない落とし穴もある。将来の報酬予測で活性化するドーパミン神経系は、その期待が裏切られた瞬間に停止してしまう。たとえば上司が「この仕事をやり遂げたら焼き肉だ!」と鼻先にニンジンをぶら下げておきながら、仕事の途中で「あれはウソ」と言ったらどうなるか。

「やる気を失うというより、頭の中が真っ白になります。そこから怒りに転化することもある。これは“報酬予測誤差”といって、自分自身に報酬を与える場合も、成果と報酬への期待はあまり高めないほうがいい面があります」

事前にイメージする行動が、実力に見合わないほどハイレベルだと、達成できないことがある。目標未達がつづけば誰でも気持ちがへこんでしまう。そういう場合に「とはいえ、よくやったな」と褒めて、別の報酬に上書きすることも重要だ。

「仕事のパフォーマンスが高い人は、予測した報酬が得られなくても挫折感を味わいません。次の報酬にすぐ目を向けるからです。つまり、報酬について“待つ心”が強いという特徴もあります」

気持ちがへこまなければ、仕事を投げ出すこともない。だから、厚い信頼が得られるという好循環もある。次の報酬を待つ心には、“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンが影響するという。ちなみにセロトニンの分泌をよくするには、肉などのタンパク質が効果的だといわれる。4倍働いて2倍遊ぶ人に、焼き肉などの美味しい食事を楽しむ機会が多いとすれば、ここでも好循環が起きているのかもしれない。

篠原菊紀
諏訪東京理科大学 教授
1960年、長野県生まれ。東京大学教育学部卒業後、同大学院教育学研究科修了。学習や運動などの脳活動の研究を行っている。著書に『「すぐにやる脳」に変わる37の習慣』など。
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