時間はどんな人にも平等に与えられている。「名リーダー」と呼ばれる人たちは、その時間を最大限に有効活用することで、成果を残してきた。彼らはなにを優先して日々すごしているのか。三者三様の考え方を紹介しよう。第1回はダイキン工業の井上礼之会長だ――。(全3回)
※本稿は「プレジデント」(2018年1月29日号)の特集「24時間の使い方」の掲載記事を再編集したものです。
「二流の戦略と一流の実行力」
「決断のタイミングを逸するな」といっても、大きなものを背負えば背負うほど、決断力は鈍るものです。そこに、わずかでもネガティブな情報や意見が並びはじめると、さらに決断に迷いが生まれてきます。
そこで、自分の決断に確信を得るために、他の人の意見に耳を傾けることになるかと思いますが、これがまた決断を鈍らせることになります。
私が決断の基準にしてきたのは、「六分四分の理」。どちらにも理があり、どちらとも正しいことのほうが多いものです。それでも一方に六分の理があれば実行に移し、必要であれば戦略を軌道修正するという考え方です。
欧州事業が急成長する基盤となった2000年代前半の販売計画の緊急練り直し、08年の中国の珠海格力電器との提携、12年の米グッドマン・グローバルの買収などは、すべて六分の理で決断したものでした。
なぜなら、自分の決断に賛成する人ばかりとは限らないからです。場合によっては、支持する人が半数以下ということもあります。
六分四分の理という考え方には、一定の割合の失敗は許容するという意味も含まれます。いささか決断に逃げ道をつくっているように聞こえるかもしれませんが、六分成功すれば四分は失敗してもいいくらいの気持ちの余裕は大切なことです。心理的に遊びをつくっておくことで、実行段階で起きる予期せぬことや変化の兆しに臨機応変に対応できるようになります。