デキる社員に「ノロい人」はいない

(3)「しかも早く」

松下幸之助さんは、ものごとを早く終わらせることを強く意識していた人でした。

私も経営コンサルタントとして多くの有能な経営者や管理職を見てきましたが、のんびりしている人で成功している人を見たことがありません。彼らの共通点は「明日伸ばしの習慣を持たない」ということです。そして、一つひとつの仕事もきっちり手早く完了します。

松下さんは、書いています。

「ものごとを、ていねいに、念入りに、点検しつくしたうえにもさらに点検して、万全のスキなく仕上げるということは、これはいかなる場合にも大事である。(中略)しかし、ものごとを念入りにやったがために、それだけよけいに時間がかかったというのでは、これはほんとうに事を成したとは言えないであろう。(中略)今日は、時は金なりの時代である。一刻一秒が尊いのである。念入りな心くばりがあって、しかもそれが今までよりもさらに早くできるというのでなければ、ほんとうに事を成したとはいえないし、またほんとうに人に喜ばれもしないのである」(『道をひらく』)

まず、大切なのは質です。質を高めなければ評価を得られません。しかし、それを早くやる。そういうことを工夫できる人は、いいアウトプットがたくさんできます。その結果、さらにチャンスが与えられます。その仕事も速くこなす。そうなれば、良い循環で、さらに評価を得られるのです。

「時間の長さ」だけで勝負している人は、必ず限界がきます。例えば、プレゼンテーションの資料を時間かけていいものに仕上げる。悪くはありませんが、問題はあります。

なぜなら誰にも1日は24時間しか与えられていないからです。若いうちは、求められるレベルや量がそれほど高くはありませんから、残業を多くするなどで何とか仕事をこなせば、評価も得られるかもしれません。しかし、仕事量が増え、高い質の仕事を求められるようになると、それではどうしようもありません。ではどうすればいいのか。「時間」から「工夫」に焦点を変えていくのです。苦労して「時間」をかけて自己満足に陥っていないで、課された仕事を「工夫」して短時間でやる。この心がけこそが人を磨くのです。