公的データに見る転職事情

ここで少し、データにあたってみよう。転職に関するデータだ。

厚生労働省の「労働経済白書」(2014年版)の第3章「職業生涯を通じたキャリア形成」には、次のような記述がある。

<男性では、30歳台から50歳台半ばまでの年齢層で、約半数が初職から離職することなく就業し続けている者で占められている>
<女性では、初職から離職せずに就業し続けている者は少数派であり、40歳代後半では、約4割の者が初職から2回以上転職している>

要するに「転職経験者はかなり多い」ということだ。

また、労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2017」によると、1990年以降、15~24歳男性の転職率は年ごとに7.5~13.2%の間で推移しており、最新の2016年では10.0%だった。ちなみに転職率とは「労働者に占める転職者の割合」を示している。

他の年齢層や女性に目を向けて見ると、25~34歳男性は同じく4.2%~6.9%で、2016年は6.0%。15~24歳女性は同じく9.1~15.8%で、2016年は13.0%。25~34歳女性は同じく6.0%~9.9%で、2016年は7.9%となっている。これは非正規も合わせた数字だが、正規職員・従業員の場合は男女合算して1990年以降、毎年3~4%台だ。2016年は3.2%である。

誰でも一度くらい「もうイヤだ」と思うもの

それでは転職している人は、何回ぐらい転職しているのだろうか。厚労省の「転職者実態調査」(2015年)によると、転職経験のある15歳以上のうち、転職回数が1回の人は28.8%、2回は19.1%、3回は20.0%、4回は12.5%で、5回以上の人は18.6%だった。つまり転職者の3分の2以上は転職回数が3回以下ということになる。

これらのデータから浮かび上がるのは「若手や女性の転職率が高い」「転職経験を持つ人でも、多くの転職回数は3回以下」ということである。私の知り合いには「転職9回成功男」「年間3回転職男」などもいるが、彼らはレアケースなのでここでは紹介しない。多数派はあくまでも「一生で1回くらいは転職するかもしれない」という人生だ。

生きていれば、「これ以上は耐えられない」と感じるような経験をすることなど日常茶飯事である。どんなことでも、一度くらいは「イヤだな」と思ったりするものだ。だからこそ、会社に入る前や入った直後の段階でいきなり絶望しないでほしい、とまずは言いたい。人生なんて、そんなものなのである。

そして、私自身の経験や周囲の例などを見て感じるのは、どうしても耐えられずに会社を辞めたとしても、路頭に迷うようなことは意外に少ないということだ。「もうイヤだ」と直情的に会社を飛び出したにも関わらず、転職に成功しているケースは数多い。