転職が多い業界、少ない業界
私の仕事は東京を舞台としたウェブメディアの運営ということもあり、IT業界および出版業界、そしてときどき広告業界が主戦場となる。これは業界の風土も関係しているだろうが、出会う人々は転職経験者やフリーランスだらけだ。さらに、彼らの多くはそれなりに幸せそうな人生を送っている。
その一方、大学の同級生でいわゆる一流企業に入社した人々は、ほとんど転職していない。なかには転職する人もいるが、それは少数派である。転職をしていない同級生が勤める会社の名前を挙げると、以下のような感じだ。
トヨタ自動車、日本銀行、三菱商事、三井物産、住友商事、みずほ銀行、日本生命、東京海上日動、キリンビール、KDDI、NTTコミュニケーションズ、住友電工、三菱重工、石川島播磨重工、三菱地所、三井不動産、朝日新聞社、読売新聞、テレビ朝日、フジテレビ、朝日放送、埼玉県庁、NEC、富士通、東芝、TBS、講談社、小学館、集英社、マガジンハウス……。
とりわけ金融、商社、メーカーあたりは、新卒で入った会社に残り続ける人がかなりの割合を占める
対して、上記企業と同様に「就活の成功者」たる人々が行く企業でありながら、電通や博報堂といった「業務範囲がやたらと広くて潰しが効く」広告代理店や、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン・コンサルティング・グループといった外資系コンサルティングファームなどは他の職場に転職していく人がそれなりにいる。これも、業界の風土や文化の違いといえるだろう。
会社の10年後など予測できない時代
なお、前述した「勝ち組」企業に東芝を紛れ込ませたのは“あえて”である。私が新卒のころ、東芝はまごうことなき勝ち組の就職先だった。大学時代の友人・知人が3人、東芝に就職したが、彼らはまだ会社にいる。きっと彼らは「なんとか会社を立て直したい」と考えて、職務にあたっているのだろう。
おそらく、東芝に入ったときは「これで一生、安泰だ」といった考えも持ったのではなかろうか。昨今、東芝は大変な状態にあるが、それでも彼らは残っている。私からすれば「なんでさっさと泥船から脱出しないんだよ!」なんて言いたくなってしまうところなのだが、結局、世の中には「転職できるタイプ」と「転職できないタイプ」が明確に分かれて存在しているのだと思う。「一カ所に固執するタイプ/しないタイプ」と言ってもいいかもしれない。
それを踏まえると、内定獲得後にモヤモヤしたり、4月1日の初出社を前にモヤモヤしたりしている人は、単に「転職できるタイプ」「一カ所に固執しないタイプ」の予備軍であり、どこに行こうともそれほど満足せず、より良い場所を探し求めてしまう可能性がある。
その時代の勝ち組であろうが、10年後にはどうなっているかわからない、というのが現代の新卒就活の特徴である。私が就活をした当時、勝ち組の就職先だった日本債券信用銀行(日債銀)、山一證券、北海道拓殖銀行は、もはや存在すらしていない。考えようによっては、一カ所に固執しないような腰の軽さを備えているほうが、世渡り的には有利と見ることもできる。