危機管理のやり方として最悪だった麻生財務相の対応

麻生さんの一連の対応は、残念だが危機管理のやり方としては最悪である。麻生さんは森友学園問題が発覚した後も、財務省の言い分を鵜呑みにして自ら強力な調査の陣頭指揮をとらなかった。財務省の主張の通り、「適正な取引だった」、を繰り返しただけだった。

しかも、あれだけ1年間、財務省は何も調査せず、嘘をつきまくっていたのに、書き換えが発覚した途端、書き換えは佐川氏の答弁と整合させるためのものであり、政権への忖度はなかったと言い切った。

いったいその根拠はどこにあるのだろうか。詳細な調査をする前に断定したということであれば、無茶苦茶な予断である。こんな結論先にありきの人に、徹底調査などできるわけがない。調査の陣頭指揮は、麻生さん以外でやるべきだ。そもそも財務省や麻生さんが調査しても、あれだけ嘘を付きまくった財務省の調査結果を誰も信用しないだろう。

国政調査権の発動でもいいが、国会議員の質問では全くダメだ。国会での集中審議を見ても、真相を解明するよりも自分の手柄を見せるパフォーマンスの場になっている。一人30分程度の持ち時間で、次から次へと何人もの国会議員が出てくる。これは調査なのか、それとも自分がやっているということを見せたいだけなのか。

調査なら、数十時間、いや数日かかるのは当然だ。トランプ大統領が、ロシアの大統領選介入疑惑で捜査を受けている。これはロバート・モラー特別検察官によるが、その捜査はしっかりしたチームでもう数か月もやっている。これが本当の真相解明のプロセスだ。

質問の技術もノウハウも、ましてや証拠法についても知見のない国会議員が、持ち時間30分程度で次から次へと出てきて、戦略性・戦術性のない質問や自分の意見を述べて終わっている。本当に真相解明するなら、国会議員の下に、プロの特別調査チームを置くべきだ。

そこから安倍政権は、何について反省し、今後何を改めなければならないのかがはっきりする。

安倍政権は、今回の土地取引がスペシャル例外・異例契約で土地の値引きについては根拠不十分・杜撰なものであったこと、そこに昭恵さんの存在も少なからず影響したこと、文書書き換えについては佐川氏の答弁に合わせるという動機もあったろうが、安倍さんの発言も少なからず影響していたことを素直に認め、謝るべきところは謝るべきだ。そのことによって、国有地取引の問題点、首相夫人の行動の問題点、政治と官僚の関係の問題点が明らかになり、しっかりした対策を講じることができる。最近も前川喜平前文部科学事務次官がある公立中学校で講演会をやったことに文部科学省が調査したことについて、自民党の文部科学部会会長である国会議員の関与の仕方が問題になっている。政治と官僚の役割分担や関係性を改めていくためには、まずは問題点を素直に認めることが第一である。その上で、安倍さんは違法不正はないので引き続き首相の職を全うしていきたい旨を国民に問うべきである。

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※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.96(3月20日配信)を一部抜粋し、事態の推移に合わせ修正および加筆したものです。もっと読みたい方は、メールマガジンで! 今号は《【解明! 公文書書き換え問題〈2〉】真相は近畿財務局のチョンボと忖度との「合わせ技一本」だ!》特集です!!

(写真=iStock.com)
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