選択的夫婦別姓を困難にする、国際結婚に十分対応できない、出身地差別を助長する――など問題が多い現在の戸籍制度をいったん廃止し、マイナンバー制度をフルに活用した新しい身分管理制度をつくるべきだと主張する橋下徹氏。日本維新の会・足立康史衆議院議員と議論を重ねることで、現実の政策プランが浮かび上がってきた。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(3月6日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

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なぜ、今の日本維新の会に力強さを感じないのか?

▼選択的夫婦別姓に関するそれぞれの持論
〔足立案〕家族単位の今の戸籍制度を維持しつつ、夫婦別姓にしたい配偶者は旧姓を戸籍に併記する。
〔橋下案〕家族単位の今の戸籍制度を廃止。マイナンバー制度をフル活用した新たな管理制度の構築。それが直ぐにできなければ、戸籍を個人ごとの単独戸籍にする。

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写真=iStock.com/itasun

【橋下徹】シルバー民主主義の話に戻りますが、資産のある年金受給者にきっちりと課税したり、年金額を縮小したりするには、資産の把握が必要不可欠です。資産を多く持っている高齢者には年金は我慢してもらうしかありません。年金はあくまでも保険であって預貯金ではありません。老後の生活が大変な人にだけ年金を給付すべきです。

このように資産の有無によって年金額を増減させる年金制度に変えていくためには、マイナンバーに紐付けした資産管理制度が必要ですね。こうなると、僕の持論である新しい、効率性を徹底追求した管理制度が必要になってきます。ゆえに現戸籍制度の廃止。

出生地差別の完全解消、真の所得の再分配。そのために現戸籍制度を廃止し、マイナンバー制度をフル活用した個人ごとの新しい管理制度へ移行する。これこそ、新しい日本への針路の一つだと思います。

足立さんの政治的多数形成の苦労、霞が関との議論による現実的な制度設計の苦労は承知していますが、やっぱり経路依存的(これまでの制度を前提とする)な思考で進めるとインパクトがなくなっちゃいますよね。現戸籍にまつわる感情・情緒(家族の一体性)を基に夫婦別姓を実現しようとすると、足立案のように戸籍の改善止まりとなってしまいます。

本質的な解決を目指すと、夫婦別姓問題の解決だけではなく、その他の解決(公平・公正な年金制度、高齢者への公平・公正な課税、出身地差別の解消など)にも結びついていくんですよね。

これが周辺的問題の解決と核心的問題の解決の違いだと思います。

もちろん政治は口だけではダメな世界で、多数を形成しなければなりません。現戸籍制度を廃した抜本的な管理制度への移行というのは今の日本維新の会では多数にならず無理でしょうね。

そういうところが、日本の新しい針路を切り拓く力強さを国民の多くが維新に感じない理由の一つとなっているような気がします。

一部ネット支持者だけに拍手喝采を受けるウルトラライト的な主張を繰り返す政党よりも、これまでの政治が手を付けなかった日本の課題を解決しながら、日本の新しい針路を導き出す政党の出現の方を、国民の多くは期待していると思います。

維新は、「フロー課税からストック課税へ。受益と負担の徹底をはかる」ということを根本思想としていますが、その実行方法についての詰めが甘いです。

国税庁と日本年金機構・全国健保協会(旧社会保険庁)とを統合した歳入庁の設置ということを維新は政治的方針として掲げていますが、じゃあ歳入庁がどのように国民の資産を把握するのかと言えば、それは新しい管理制度を用いるしかないでしょう。

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