会計検査院の報告書に基づいて今回の大幅値引きには根拠がないことをまず確定せよ

今回の森友学園問題は大きく2つに分けて考えなければならない。森友学園に大幅値引きで土地を売った問題と、公文書書き換え問題。この2つはごっちゃにしてはいけない。そして忖度についても、地方の出先機関である近畿財務局と財務省本省を分けて考えなければならない。

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近畿財務局と森友学園の大幅値引き土地取引がスーパー・スペシャル例外契約であったことをまず確定しなければならない。この点、今の国会答弁を見ても太田充財務省理財局長は認めないね。相変わらず「適正な取引だった」と強弁している。取引内容については会計検査院の報告書で明らか。何から何までもが異例ずくめの契約で、特に大幅値引きの根拠となった土中ゴミ処分費の積算がむちゃくちゃだったことは明らかになっている。これをずっと適正な一般的な取引だと言い続けた佐川氏や、そこをきちんと確認しなかった麻生財務大臣、安倍政権の責任は重い。

今回の土地取引は、確かに官僚に与えられたルールの中でやっているのかもしれないが、それは今までにやったことのない例外の積み重ねをやっている。そして例外をやるために必要な根拠の確認が不十分だったし、今となって根拠資料は全くないみたい。

財務省や安倍政権は、仮に「適正な取引」であったとしても、それは「通常の一般的な」取引なのか、「例外を積み重ねた異例中の異例の」取引なのか、「例外・異例をやるための根拠はきちんと存在するのか」を明確にしないといけないね。佐川氏は「一般的な取引だ」と国会答弁しているけど、これは明らかに嘘だ。これは行政を経験した者が今回の土地取引内容を見ればすぐに分かることだ。

今も太田充財務省理財局長は「適正な取引だった」を繰り返しているけど、会計検査院の報告書によれば、それは堂々と適正な取引だったと言えるような土地取引ではないよ。野党国会議員も、いきなり安倍政権が違法・不正な介入をやったということを明らかにする大ホームランを狙わずに、まずは会計検査院の報告書を基に、今回の大幅値引きの土地取引がスーパー・スペシャル例外・異例契約で、大幅値引きの根拠が全くない杜撰な契約であったことを太田充理財局長に認めさせるところからスタートしないとね。

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役所職員は真面目に仕事をする反面、うるさ型の人物に弱いところもある。

土中からゴミが発生したので売主である近畿財務局の責任を追及する。学園の開校が遅れたら損害賠償請求する意向を示す。売買代金の減額を要望する。これら籠池氏の主張・要望は違法・不適正なものではない。もっとえげつない主張をする人は大阪にはたくさんいる。

こういう交渉の際に、相手の弱いところをついていくのも交渉のノウハウだ。籠池氏は、ここで少し親しくなった首相夫人の昭恵さんの名前を最大限に活用したのだろう。

財務省の地方出先機関の役人なら、この問題を早いところ片づけて籠池氏から解放されたいという気持ちがあったであろう。しかしそこに昭恵さんの存在が全く頭にちらつかなかったかと言えば、それも完全には否定できないはずだ。

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野党の追及は稚拙。順番が違う!

野党の追及の仕方も稚拙だね。いきなり違法不正を暴こうとしても、ある程度の証拠も持っておらず、30分ほどの質問時間で、しかも手続法・証拠法にも無知な国会の場で、本人に自白させようとしても無理に決まってる。そんな簡単に自白させることができるなら、警察や検察の捜査機関も日常、苦労しないっていうの。

まずはしっかりと攻めることができるところから攻めないとね。真相追及というのは政策論争と違って地味なもんなんだよ。数少ない証拠や客観的事実、状況証拠を積み上げて、推定していくプロセスだ。自分の手柄を見せつけようとする国会議員にはなじまない仕事。まずは「手続き」のおかしさを攻めていくのが王道なんだよね。

近畿財務局が大幅値引きして森友学園に土地を売却した手続きはボロボロに杜撰。会計検査院の報告書に基づいて、まずはここを財務省や安倍政権にしっかりと認めさせる。まだ財務省は「適正な取引だった」と言い張っているようだからね。

そして安倍政権は外形的公正性の確保に弱い。

加計学園問題でも、安倍政権に違法不正があったとの立証はない。しかし、実質的な事業者選定のプロセスに入った段階で、その事業者とゴルフや会食をやることは違法不正がなくても外形的な公正性を害する。スーパー・スペシャルな契約の相手学園の名誉校長に首相夫人が就任するということも同様である。違法不正がなくても強く公正性を疑われるような状況は避けなければならないし、それを避けることができずに疑われた場合には、素直に謝って改めるべきである。

さらに一番の問題は、安倍政権のガバナンス責任だ。

森友学園問題が発覚した昨年2月から、安倍政権はどのように霞が関をコントロールしたのか。野党から大幅値引きの根拠がおかしいと追及されたときに、安倍政権はどこまで、どのようにそれを確認したのか。佐川前理財局長が国会答弁をするにあたり、答弁調整会議はどのように行われ、安倍政権はどのように関与し、指揮命令を出したのか。野党からある程度根拠のある指摘を受けた場合には、しっかりとそれを確認するのが政府の責任である。さらに役人組織が政権を騙し続けていたというのであれば、それも政府組織としては大問題である。陸上自衛隊日報問題と同じく、日本の政府は政治家によるガバナンスが不十分だということで、拡大した自衛権を政府に渡すことは時期尚早という結論にも至る。

安倍政権の痛恨のミスは、昨年2月に野党から大幅値引きの根拠である土中ゴミの不存在を指摘されたときに、すぐに敷地を掘り返してゴミの有無を確認しなかったことだ。校舎が建っていないグラウンド一部の土中にもゴミが存在しているとされて値引き計算されていたので、そこはすぐにでも掘り返すことができたのである。

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