広尾学園中学は「作用点」と「力点」の入れ替わり
子供は困惑した表情で言った。
「必要な力の大きさを数字で答えさせる問題(「この爪切りで爪を切るとき、指で爪切りを押す力の何倍の力で刃がつめを切ることができるか。小数第2位を四捨五入して小数第1位まで答えなさい」)で、最初は(出題された)文に沿って答えを解答欄に書いたけど、(ありえない数字だったので)さすがに違うだろうと思って、(作用点と力点を)読み替えた値である0.1を書いておいた」
合格発表は翌日3日の13時だ。問題に不備があればウェブサイトに公開されそうなものだが、母からのメールには、現時点(3日0時すぎ)ではウェブサイトに問題の不備が掲載されていないことも書かれていた。
また、この入試は問題文が生徒に渡されず、塾関係者にも非公開で、後に発売される入試問題集に載るまで見ることはできない。本当に誤りなら早めに連絡をしておく必要がある。
そこで私は、母親からのメール着信から1時間以内に次のようなメールを広尾学園の広報の先生にメールした。生徒の勘違いの可能性もあるので、文面は慎重なトーンにした。
「本日メールしましたのは、生徒から昨日受験した理科の問題でどうしても納得がいかないところがあるという申し出があったためです。入試問題が回収されるため手元に問題がなく、生徒の指摘について塾として検討させていただければありがたいです」
問題を見せてほしいと要望したが、合格発表までは連絡がなかった。どのようになったのか心配していたが、合格発表と同時にウェブサイトで出題ミスについても発表があった。
▼生徒の指摘は正しく、勘違いではなかった
生徒が指摘したように、やはり「力点」と「作用点」の位置が逆になっていた。そして、同校の先生からは、次のような丁寧な回答もメールで届いた。
「医進・サイエンス回の入試問題につきましては学内でも不備に気づき、該当問題は全員を正解にする対応を取らせていただきました」
要するに、生徒の指摘は正しく、勘違いではなかったことになる。
私の塾の本部がある東中野の生徒で広尾学園のこの回の入試に挑んだのは5名。そのうち指摘をした彼だけが不合格となり、他の子は4名全員が合格した。もちろん、理科のこの問題によって不合格が決まったとは限らない。
ただ、不合格となった彼は、より難度が高い、都内共学進学校の最高峰とされる渋谷教育学園渋谷中に合格し、進学することになった。他校では特待生にも認定されている。それだけに、この「理科」の出題ミスが、彼の集中力や受験のリズムを微妙に狂わせてしまったとしたら、とても残念なことだと思う。