ボストン・コンサルティング・グループはこの実験結果を無駄にしなかった。4年後には、同社の900チーム以上(30カ国にまたがる)が完全休養日を採用。従業員の勤務時間数は減ったが、なんと、会社の業績は伸びたのだ。要するに、平均的従業員にはおのずと限界があり、仕事量があまりに増えると、仕事の質に支障が出る。同時に、生活の質(QOL)も低下することになる。

2014年のギャラップ調査によると、アメリカ人就業者の39%は週に50時間以上働き、18%は60時間以上働いている。こうした残業がもたらす利益は何か? スタンフォード大学の調査によれば、無に等しい。55時間を超過すると生産性は急激に低下するので、「週に70時間働く者は、余分な15時間で何も生産しないことになる」という。生みだされているのはストレスだけだ。

社会科学と関連する経済的問題を扱う雑誌『ジャーナル・オブ・ソシオエコノミックス』に掲載された論文では、残業ストレスによる幸福感の減少は、残業代がもたらす幸福感の増加を上まわるとの調査結果が示された。お金では埋め合わせが利かない。

科学的に実証されたリラックスの効果

写真=iStock.com/BraunS

楽しみやリラックスすることが、成功と関わっている点はほかにもある。例えば昨今、どこの企業もイノベーションの必要に迫られ、創造性を必要としているが、職場で長時間残業すれば新しい発想が浮かぶわけではない。むしろ逆だ。数多くの研究で、ストレスや残業を減らし、リラックスしてこそ創造性が発揮されることが証明されている。

事実、あなたが最も創造性に富む時間帯は、実は職場に着く前に訪れている。大半の人はシャワーを浴びているときに妙案が浮かぶという。ペンシルバニア大学のスコット・バリー・カウフマンは、72%の人はシャワーでアイデアがひらめいた経験があり、職場でアイデアが浮かぶ経験よりはるかに頻度が高いことを発見した。なぜシャワー中? 単純にリラックスできるからだ。そういえば、アルキメデスが「ユリーカ!(われ発見せり!)」と叫んだのは仕事場ではなく、のんびりと温かい風呂につかっていたときだ。