経団連の次期会長に日立製作所会長の中西宏明氏が内定した。経団連会長に日立出身者が就任するのは初めてだ。近年、経団連は政府との距離が近く、有効な政策提言ができていないという評価がある。「本命中の本命」といわれる中西次期会長は、経団連の存在感を示すことができるか――。
日立会長・中西宏明(写真=アフロ)

「本命中の本命」経団連会長就任の舞台裏

日本経済団体連合会(経団連)の次期会長に、経団連副会長を務める日立製作所の中西宏明会長が内定した。日立から経団連会長が選ばれるのは初めてだ。榊原定征会長は1月9日の記者会見で中西氏の会長就任を発表し、「政府で経済界を代表し、活発に活動している。次期会長に最もふさわしい」と述べた。

榊原会長は後継者の条件について、早くから(1)製造業出身者、(2)グローバル企業経営者としての国際経験、(3)政権との協力関係の継続――の3点を挙げてきた。会見では「日立は日本を代表する企業」「製造業を先駆的に改革する経営者だ」と評した。

中西氏の経営手腕には高い評価がある。日立は2009年3月期に日本の製造業で当時、過去最大となる7873億円の最終赤字を出していた。10年に社長に就任した中西氏は、どん底に陥った日立をV字型回復に導いた。選択と集中による事業構造転換に取り組み、中核事業を外れた上場子会社の再編にも大ナタを振るった。

過去の成長体験をかなぐり捨ててよみがえらせた強いリーダーシップに、榊原会長は白羽の矢を立てたようだ。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)の活用いかんで事業の浮沈が決まる時代を迎え、デジタル分野に通じた日立の出身者なことも、中西氏を後押ししたのだろう。

しかし、いまの経団連の状況を考えれば、「中西氏を次期会長にせざるを得なかった」という事情も透けてみえる。経団連は戦後の日本経済を牽引してきた製造業を中心とした経済団体で、会長、副会長ら首脳陣は主要産業の代表で構成される。このため会長職は製造業出身者からという不文律があり、総合商社や銀行、証券、サービス産業から会長が出たことはない。一方、新日鉄住金、東芝、トヨタ自動車は複数の会長を輩出してきた。