珍しく弱者に目を向ける産経
最後に産経新聞(2月2日付)の社説(主張)に触れる。
産経社説は冒頭部分で「安全管理が手薄でなかったか検証すべきである。命を守る対策の徹底を求めたい」と訴える。
安全管理が手薄だったから火災が起きたのである。検証しなければならないのは、どうして安全管理が不十分になったかだ。産経社説の主張は少しずれている。
しかしながら強者を重視する傾向が強い産経新聞が、お年寄りや体の不自由な人、つまり弱者をテーマに社説を書いたことは一歩、前進である。断っておくが、これは決して皮肉ではない。
産経社説はその中盤でこう書く。
「経済的に困窮する高齢者らの受け入れ施設が足りないことも深刻で、今回のような施設に居場所を求める人が増えている実態を知るべきだ」
「そうした施設では安全対策が疎かになりがちだ」
これもその通りだ。
企業の支援を求めるという手もある
弱者の救済をどうするか。それを新聞などのメディアは、国や自治体、そして社会にその必要性を訴えていくべきだろう。貧困の中で暮らさざるを得ない高齢者の実態を報じていくことで、共感の輪を広げていく必要がある。
実態の改善にはかなりの資金が必要になる。基本的には税金を充てることになるが、現実的には国家予算や地方予算から付け替えるしかない。納税者の理解を得るためには、弱者に対する共感を広げなければいけない。
企業の力を借りることも考えたい。2月8日付の朝日新聞の経済面で、サントリーホールディングスが働き方改革で減った残業代の一部を、社員のがん治療費の補助に充てる方針を決めたというニュースを読んだ。
このように企業の支援を求めるという手もあるはずだ。公益性が強く求められる時代である。企業の大きな宣伝になるだろうし、自治体だけでは解決しにくいところに民間の活力をうまく導入できれば、問題の解決は早まる。
政治家も真剣に考えてほしい。いまの閣僚は3世、2世の世襲議員が多く、お金の苦労をしらない。貧困の厳しさを理解できていないのではないか。
安倍晋三首相も強者ばかりに目を向けるのではなく、弱者にもしっかりと目を向けてほしい。強者優先の政治では、社会不安は増すばかりだ。一方で社会不安の解消は、経済成長にも寄与する。そのことをぜひ理解してもらいたい。