「下宿」なのか、有料老人ホームなのか判然としない

読売社説も「そうだとしても、多数が犠牲になったことに対する結果責任は重大である。高齢者を入居させる上での態勢整備が不十分だった、と言わざるを得ない」とはっきり運営者の責任を指摘している。

後半で読売社説は「相次ぐ惨事を教訓に、消防法令が改正され、高齢者施設などでの火災報知機やスプリンクラーの設置基準が強化された」と書き、「だが、今回のように『下宿』なのか、有料老人ホームなのかが判然としない建物では、防火態勢はいまだ脆弱なのが実態だろう」と問題の核心を突く。

そうした施設への対策を「高齢者が安く寝泊まりできる施設には、根強い需要がある。それらに可能な限り行政の目を行き届かせることが必要だ」と主張する。

「行政が目を配る」ことは当然である。問題は目配りの後どうするかだ。防火態勢の不備がある施設は資金がない。経済的に苦しいから防火設備に手が回らないのだ。問題は行政がどこまで税金を投入して面倒をみられるかだろう。

毎日は「居住福祉」の軽視を指摘する

2月2日付の毎日新聞の社説は「今回の火災の背景には『居住福祉』を軽視してきた日本の困窮者支援の現実があるのではないか」と指摘する。

日本の困窮者支援の実態はどうなっているというのか。毎日社説は次のように書く。

「住居のない困窮者はピークの2003年に2万5296人だったが、16年には6235人へ減少した」

「しかし65歳以上が約4割を占め、70歳以上も13%。10年以上ホームレス状態の人も3割を超える」と「高齢化と長期化が課題だ」と訴える。

そのうえで「住居を失うと、ハローワーク登録、アパートの入居手続き、年金受給手続きなどが困難になる」と指摘し、「軽度の知的障害、精神障害がありながら、障害者手帳を持っていないため、福祉制度を利用できない人もいる」と解説する。

さらに「困窮者を支援している団体の多くは公的な補助金が十分に得られず、自ら資金を調達して活動している。運営費が確保できないため、古くて狭いアパートや空き家を改装して困窮者を支援せざるを得ない実情もある」と指摘する。

福祉の資金をどうするのか

結論として毎日社説はこう書く。

「日本の困窮者対策は、居住の確保のための支援が乏しく、就労支援に重点が置かれている。生活保護には住宅手当、生活困窮者自立支援事業には住居確保給付金という制度もあるが、対象が離職者で就労能力や意欲がある人に限定されている」

最後に「住む場所や生活を支援する『居住福祉』を手厚くしないと悲劇は繰り返されるだろう」と主張する。

まさしくその通りだと思うが、問題は手厚くするためにどこから資金を調達してくるかである。