ニューイヤー駅伝に出場した青学大OBは5人だけ
対照的に両角監督率いる東海大はトラックでスピードを磨き、世界を目指す未来型のチーム。筆者だけでなく、多くの陸上関連のジャーナリストにもそう考える人は多い。
前述した昨年(2017年)の日本ランキングトップ50をもう一度見てみると、5000メートル、1万メートルでランクインした青学大OBは1万メートルの藤川拓也(中国電力)のみだ。それに対して、東海大OBは5000メートルで佐藤悠基(日清食品グループ)、1万メートルで佐藤、早川翼(トヨタ自動車)、石川裕之(愛三工業)の3名が入っている。東海大OBではないが、両角監督が佐久長聖高校時代に指導した選手では、早稲田大OBの大迫傑(Nike ORPJT)、中央大OBの上野裕一郎(DeNA)らがいる。現在、「2020年東京五輪」のマラソン日本代表選考会として最重要レースとなる2019年開催の「マラソングランドチャンピオンシップ」(MGC)の出場権を獲得しているのが全部6人、うち2人(大迫と東海大OBの村澤明伸)が両角監督の教え子だ。
筆者は毎年箱根駅伝を取材しているが、前出の佐藤(東海大OB)や大迫(佐久長聖OB)ら“両角チルドレン”は、チームのために最大のパフォーマンスを心がけつつも、モチベーションを箱根駅伝のみに絞っていたわけではなかった。箱根で活躍するよりも、世界でいかに戦っていけばいいか。そういう高い志を学生時代から抱き続けていた。
▼「箱根駅伝以上の目標を見つけられなかった」と25歳で引退
青学大には箱根駅伝で3連覇した精鋭OBたちが実業団で活躍しているはずだが、結果を残しているとは言いがたい。今年の元日に行われたニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝)の出場者を調べてみると、青学大OBは5名(神野大地、藤川拓也、米澤類、川口将宏、山村隼)しかいない。東海大OBの9名、駒大OBの18名、東洋大OBの22名と比べると寂しい印象だ。
神野大地(コニカミノルタ)のようにマラソンで勝負すると決めて、積極的に取り組んでいる選手もいるが、青学大OBは箱根駅伝がピークになっている印象がある。大学3年時のびわ湖マラソンで2時間10分02秒(学生歴代3位)をマークした出岐雄大が、「箱根駅伝以上の目標を見つけられなかった」と25歳で引退を決断したのも、非常に残念だった。
前述した日本ランキングトップ50に入っている現役の東海大選手らは、大学卒業1年目に東京五輪を迎える。筆者の取材に対し、その中のひとりはこう明言していた。
「箱根で優勝したい、という思いもありますが、個人としてオリンピックを目指せる競技力を4年間でつけていきたいんです」