2017年の中長距離は、青学大ではなく東海大に軍配

昨年、大学生の主要大会である5月の関東インカレ(関東学生陸上競技対校選手権大会)の1部の「長距離ブロック」において8名が入賞を果たすと(青学大は格下の2部で5名が入賞)、それ以降も毎月のように東海大の中長距離部門の選手は好成績を出し続けている。

6月の日本選手権(日本陸上競技選手権)では、大学で最多となる6名の長距離選手が出場すると、1500メートルでは将来有望な2年生が優勝を果たした。9月の日本インカレ(日本学生陸上競技対校選手権大会)ではのべ5人が入賞し(青学大は入賞なし)、10月の出雲駅伝を10年ぶりに制すと、11月の全日本大学駅伝は青学大に先着しての準優勝。そのあと正月の箱根駅伝では5位に沈んだわけだが、2017年の長距離は、東海大の“圧勝”といって過言ではないだろう。

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東海大の両角監督は、青学大の原監督と同学年の51歳だ。

長野・佐久長聖高校の教員時代には、佐藤悠基(日清食品グループ)、大迫傑(Nike ORPJT)など後に日本長距離界のエースとなるような選手を育成している。母校の駅伝監督に就任して7年目となるが、ポテンシャルのある選手たちには“大きな目標”を目指すような指導をしている。昨夏、両角監督はこんな話をしていた。

「チームとしては箱根駅伝が大きな目標です。でも、数名はその域を超えています。そういう学生は、『箱根駅伝は通過点』という認識でやらないといけません。チーム目標が箱根駅伝でも、全員が自分の持ち味や個性を封印して箱根に向けてじっくり取り組むのではなく、本人たちの特長を伸ばすことを考えながらやっています。箱根で勝つことよりも、重視しているのが来年(2018年6月)の日本選手権で戦うための準備です」

▼「箱根」にピークを合わせる青学大、「箱根は通過点」の東海大

両角監督の持論は「世界で戦うためには、スピードが不可欠」である。よって、箱根駅伝にばかり注力するではなく、トラックでタイムを狙う育成方法をとってきた。それは原監督を含む他大学の監督の方針とは異なるものだ。

その結果、昨年(2017年)の日本ランキングトップ50(経験豊富な社会人を含む)に東海大の選手は5000メートルに4名、1万メートルに5名がランクインしている。青学大は5000メートルが1名、1万メートルが0名だったことを考えると、その差は歴然だ。

それでも箱根駅伝は青学大が圧勝した。これは両校の“育成コンセプト”の違いによるものが大きい。青学大は、箱根駅伝に強化ポイントを置き、その力のピークを本番にドンピシャに合わせることができるチーム。これぞ原監督の真骨頂である「調整力」だろう。