転移性肝がんにも効果ある切除

肝がんは、唯一「移植」が認められているがんだ。保険適用は04年からだが、がん治療というよりも、肝機能が急激に低下した重度の肝不全の患者への治療法という色合いが濃い。ドナーの問題もあり、今は一般的な治療法とはいえないようだ。

肝臓には、体中から血液が集まる。そのため、他の臓器のがん細胞が血液に乗って流れ込み、転移しやすい。現在、大腸がんからの転移は、原発性肝がん同様に切除がなされ、その治療効果が認められている。最近、大腸がんの分子標的薬であるベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブなどの抗がん剤の進歩により、切除できないような肝転移病巣を小さくして切除することも可能に。ただ、大腸がんの肝転移は、肝細胞がんとはがんの性質が根本的に異なるので、切除以外のラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓療法は適さない。

「転移であっても肝切除は、専門知識のある肝臓外科医に任せることが望ましいが、ガイドラインにあるように、大本の大腸がんを柱にして治療方針を決めるべき。肝切除をする際にも、大腸がんの治療にあたる主治医が核になり、治療全体をコーディネートすることが望まれる」と東大の國土教授は語る。実際、転移性肝がんの手術数が多いのは、大腸などの消化器がん手術の多いがん専門病院や大学病院となっている。

肝臓は、「沈黙の臓器」と呼ばれ、病気の早期発見がしにくい。肝炎ウイルスの感染原因はいろいろ取りざたされるが、輸血や手術など特定できるのは3割で、原因がわからないことのほうが多い。だからこそ「是非一度肝炎ウイルス検査を受けるべき。もし、陽性でも肝細胞がんは経口薬やインターフェロンの投与によって発症を大幅に予防できる唯一のがんなのだから」と高山教授は、力説する。

※すべて雑誌掲載当時
※ランキングは1607病院のDPCデータを使用。2009年7~12月の6カ月間の退院患者についての治療実績。「―」は10例未満、または分析対象外とされたもの。

(Getty Images=写真 ライヴ・アート=図版作成)