東京は「周りが自主返納を後押ししたい」
1月29日付の東京新聞の社説では、得意のリードでこう主張している。
「悲劇の後では遅い。本人の自覚が大切なのはもちろんだが、周りが運転免許証の自主返納を後押ししたい」
東京新聞は家族など周囲から免許の自主返納を促すことを求めている。強制力に頼ろうとする産経社説に比べ、自然と頭に入ってくる。
東京社説はその中盤で「昨年三月、改正道路交通法が施行され、認知症対策が強化されたのに、男性は擦り抜けたのか」と疑問を投げかけ、産経社説と同じく、「七十五歳以上のドライバーは免許更新時などの検査で、認知症の恐れがあると判定されれば、医師の診断が義務づけられる。その結果、認知症と確定すると、免許の取り消しや停止の対象となる」と説明する。
そのうえで擦り抜けの可能性についてこう触れる。
「更新などの手続きを終えた後に病気や障害が悪化し、認知機能が衰えたり、判断能力が鈍ったりする場合があるだろう」
そして東京社説は「身近な家族らはよく注意を払い、免許の自主返納を促したい」と主張する。あくまでも自主返納なのである。
「運転に対する自信とこだわりの強さ」
東京社説は内閣府の世論調査を取り上げ、「七十歳以上の免許保有者が免許を返そうと思うきっかけは、複数回答で自らの身体能力が低下したと感じたときが74.3%と最多だった」と書く。
さらに「半面、家族や友人、医者らから勧められたときが26.3%、交通違反や交通事故を起こしたときが10.9%、返納するつもりはないが9.2%だった」とも書く。
そのうえで東京社説は「運転に対する自信とこだわりの強さが浮かぶ」と指摘するが、その通りだと思う。前橋市内の女子高校生の事故でも偏った自信とこだわりが、事故の引き金を引いたのだろう。
東京社説は最後に「参考にしたい」とこんな読者の体験談を挙げる。
「父は認知症が進み、医師からも運転を止められたが、聞き入れない。家族全員で警察の相談窓口に行き、認知症などの検査をした。父は認知力の低下を実感したことで、免許を手放すと言ってくれた。粘り強く説得してくれた警察官の協力があってこそだった」
説得力のある言葉や行動で相手に理解を求めることが大切なのだ。