ひふみん「直感で素早く決めることが大切」
「名言」はいつ生まれるのだろう。
ひとりの人間が、ずっと生きてきた、その軌跡の中からにじみ出る言葉は、時に人の心を打つ。たくさんの経験に裏付けられた短い言葉の中に、凝縮された「叡智」がある。
2017年6月に現役を引退した将棋棋士の加藤一二三さんとお話しする機会があった。大学の講堂で、公開の対談をさせていただいたのである。
加藤一二三さんと言えば、若いときの卓越した成績により「神武以来の天才」と呼ばれ、名人などのさまざまなタイトルを獲得し、多くの記録をつくられた方。
最近では、「ひふみん」の愛称で、テレビ番組などでも活躍され、そのお人柄が親しまれている。
以下、敬愛の念を込めて、加藤一二三さんを「ひふみん」と呼ばせていただく。
会場内にいた中学生が、最近、将棋が好きになってやっていると言った。ひふみんとのやりとりがあったのだが、その中学生が、「一手を長く考えることがある」と言ったら、即座に「それはダメだ」とひふみんが返した。
「初心者のときは、むしろテンポよく早く指さないといけない。そもそも、そんなに長く考えていたら、友達がいなくなります」
会場は大爆笑。ひふみんは続けて、初心者の頃は、とにかく直感でたくさんの将棋を指すことが大切だとアドバイスした。
タイトル戦などでは何時間も考えることがあったひふみんだが、早指し将棋もお得意。じっくり考える一方で、直感で素早く決めることの大切さも強調した。さすがの一言だと思った。