デジタル化で働き方改革は進む

3)「働き方改革」におけるデジタル化の推進

働き方のデジタル化は、従業員の生産性向上のために、電子化と業務プロセスの明確化・削減を進めるケースが多い。今後は、デジタルを活用した柔軟な勤務時間体制や、組織自体の出入りの柔軟化(中途採用の活性化、休業を取りやすくするなど)に取り組む必要性が高まると想定される。

写真=iStock.com/chombosan

これらの課題に取り組み、本質的な職場の柔軟性とその結果としての多様性を確保するためには、デジタル化以前の課題が山積している。例えば、アウトプットで働きを評価できなければ、働いた時間を測る必要が残ってしまい、在宅勤務にしても常に監視するというような本末転倒な取り組みになりかねない。また、作業の最終的な目的の明確化と個々人への裁量(および裁量の範囲外との境界線)の明確化なしには、常に上長と確認をとらないと作業が進まないため、職場の柔軟性は創出できない。

デジタル化により、オフィスで決まった時間全員が働くという固定的な働き方が当然ではなくなる。この中にあって、組織のあり方、職場のあり方、組織の構成員のマインドと行動のあり方を見直すことができれば、デジタル化による働き方改革は大きく進展する。

変革の担い手であるCDOが不要となる日

CDOは、デジタル化に向けた変革期のみに必要とされ、将来的には消滅するべきポジションである。その点CEO、COO、CFOなどとは異なる。調査においてインタビューをしたCDOは、一様に、自身のポジションは永続的なものではないとコメントしている。企業のデジタル化はある程度の変革が完了すれば当該企業はデジタル化された企業となり、変革の担い手であるCDOは不要となる。

一方で、CDOの仕事がなくなる日はそう早くは来ないかもしれない。

デジタル化は何年もかかる取り組みである。初年度は現状を把握し方向性を定め、ネットワークを構築し、翌年度に3年程度の取り組みのロードマップを立案し、推進していく、というスケジュール感である。同時に関係者のマインドや行動、業務自体の組み立て、プロセスなどをも含む本格的な変革も必要となる。

また、デジタル化の先行企業から、別業種の企業にてデジタル化を担当することになった経営幹部は、前職の経験をもってすれば極めて早く取り組みが進むと思っていたが、デジタル化後のイメージを社内に共有化し納得感を得るために想像以上に時間がかかっているとコメントしている。

急がば回れ、デジタル化を早々に進めたければ、自社を取り巻くデジタルで解決し得る課題は何か、自社はその課題に対しどう価値を創出するのか、じっくりと考え、可視化、議論、試行することである。

※CDOサーベイ(グローバル)は、以下の手法により調査を実施
ブルムバーグのデータに基づく2016年7月1日現在で全世界の時価総額トップ2500社のCDOの有無、バックグラウンドなどの分析(2015年までは1500社を対象としていたものを拡大)。CDOの有無を調査するために、企業役員データベース(Avention、BoardEx)、記者発表(Factiva)、各社ホームページ、ビジネス向けSNS(LikedIn、Xing)その他のインターネット調査を実施
※CDOサーベイ(日本)は、以下の手法により調査を実施
インターネット調査:従業員500人以上の企業の部長職以上2423名を対象にスクリーニング調査、自社はデジタル化を推進しているとした、従業員500人以上の企業の部長職以上300名に対して本調査を実施。調査期間2016年11月
インタビュー調査:特徴的なデジタル化の取り組みを行っている企業(10社程度)のデジタル化推進責任者に対するインタビュー調査。調査期間2016年12月~2017年1月

唐木明子(からき・あきこ)
PwCコンサルティング合同会社 ストラテジーコンサルティング(Strategy&)パートナー
東京大学法学部卒業、コロンビア大学ロースクール修了(LL.M)。外資証券会社にて社内弁護士として東京・ニューヨークで勤務。マッキンゼー・アンド・カンパニー、金融機関を経て、Strategy& 東京オフィスのパートナー(現職)。国内外のリテール、金融サービス業、ヘルスケア、その他分野のクライアントと、新規事業や商品・マーケティング戦略に伴う成長戦略等のテーマについて、多様なコンサルティングプロジェクトを手がける。また、CDOリサーチのスペシャリストでもある。日本企業の成長戦略実現に必要なダイバーシティの推進にも取り組んでいる。現在、ロンドンオフィスへ出向中。