企業のデジタル化は、最終的には新しい商品やサービスの提供、顧客との関係の再構築、そしてオペレーションの再構成に連なる。従来の組織の縦割りを超越して、真の顧客視点から、カスタマージャーニーを一貫して捉えることが求められる。そのためには、技術基盤とデータ、組織とガバナンス、最後に企業文化とチェンジマネジメントへの取り組み、仕事の進め方や考え方、働き方の変革をも必要とする。企業のデジタル化はどう進めればいいのかについえ考えてみよう。(第3回/全3回)

大企業ほどデジタル化が難しい理由

CDOを他に先駆けて設置しているのは従業員10万~20万人規模の企業である。より規模の大きい企業において、CDOを置いてデジタル化を進めている。

多くの大企業においてデジタル化の推進は容易ではなく、最高デジタル責任者(CDO、Chief Digital Officer)が経営陣の一員として、全社的なデジタル対応に向けた変革を主導することを期待されている。

デジタル化については、戦略の立案と、戦略の推進の両方にかなりのエネルギーが要求される。自社の経営課題に即した取り組みが必要な上に、ハンズオフの取り組み推進では、縦割り組織や縄張り意識、現状維持を無意識に期待する現場の静かな抵抗勢力によって従来通りの業務推進が優先され変革が起きにくくなってしまう。ハンズオンで実行にも時間を費やす必要がある。CDOはデジタル化におけるCEOの役割を果たす。

デジタル化の具体的な進め方

デジタル化の取り組みを具体的にどのように進めればよいか。大きく3つの取り組み分野ごとに俯瞰したい。

1)「顧客との関係」におけるデジタル化の推進

顧客との関係におけるデジタル化における最大の取り組みテーマである。従来は、大規模な調査など労力と時間をかけて消費者の断片的かつ一時点の断面を知ることがせいぜいであった。しかし、現在は、社内外のデータを収集、統合、分析することで、消費者や顧客の購買行動や製品やサービスの利用状況、時には意識までも把握することができるようになりつつある。また、従来は消費者に対するコミュニケーションはマスメディアと店頭にほぼ限られていた。しかし、現在は、一定のターゲットを定めたオンラインの広告や、SNSでの消費者間のコミュニケーションを活用するなどより対象を定め、適時適切な内容をもったコミュニケーションも可能である。