――冷蔵や常温に比べて、冷凍は「味が劣る」というイメージを持たれやすいのでは。

【松田氏】食材へのこだわりにも、味の良さにも、自信があります。年々、冷凍技術が進化して、食材が水っぽくなったり、パサパサになったりしてしまうといった味の劣化はかなり防げるようになりました。また、焼きたて、揚げたてを、いかにはやく冷凍するかにもこだわっています。上手な解凍方法をまとめた注意書きも商品に同梱しているのですが、ご自宅でもおいしく食べていただける商品になっていると自負しています。

おせちの製造風景(画像提供=久松)

――食材のどこにこだわっているのか。

【松田氏】おせちは多種多様な食品・食材を使うため、15万セットという数をそろえるためには、夏ごろから調達に動く必要があります。食材は最適な時期に仕入れ、仕込みを行います。例えば、冬が旬の大根は11月~12月頃、金柑は1月頃に仕入れ、1年前に一次加工を済ませてしまいます。冷凍ですから、作業の前倒しができるんです。冷凍に向く調理法についても研究を重ねています。例えば大根は、繊維質が多いので、やわらかく炊いて冷凍してしまうと筋っぽくなってしまいますが、逆に切り干し大根のように調理すれば、かえってコリコリした食感になります。国産を中心に質の高い食材を厳選し、それぞれの旬の時期にまとめて仕入れることで、品質を高めることに強くこだわっています。

――食品業界は比較的、参入障壁が低い。市場が拡大している「おせち」は、競争環境も厳しいのではないか。

【松田氏】おせちはニッチなジャンルです。使われている食材は、年に1回しか使わないような特殊なものや珍しいものが少なくありません。うちは規模としては中小企業ですが、おせちに特価しているので、大手流通に負けないだけの購買力があります。質の高い食材の仕入れには、自信があります。