なぜ「中小企業」でもトップを取れるのか
おせち料理の市場が拡大をつづけている。富士経済の調査によると、2016年の重詰(完成品)おせち市場は約600億円。とくに活況なのは通販市場で、EC大手・楽天市場ではおせちの売り上げが2011年から2016年までの5年間で約1.6倍に伸長しているという。
この「ネット通販おせち」で、11年連続で楽天市場の「グルメ大賞」に選ばれている怪物店がある。福岡県福岡市に拠点を置くおせちの専門店「博多久松」は、社員数25名の中小企業だが、自社工場でつくる「和洋折衷本格料亭おせち『博多』」(1万5800円、税・送料込み)は、週間ランキング1位を累計で214回以上獲得している。
同社の常務取締役・松田健吾氏に、「おせち」というニッチジャンルでトップを走り続けるための戦略について聞いた。
初年度は90個、2年目は2500個、3年目は9500個
――ネット通販おせちを始めたきっかけは。
【松田氏】元々は仕出し弁当の店でした。高校卒業後、1998年に家業を手伝い始めてから、なにか新しい挑戦ができないかと、2004年に楽天市場で「ネット通販おせち」をはじめました。初年度は90個を用意したのですが、わずか1週間で売り切れました。手応えを感じ、翌年は2500個を用意し、これも12月を待たずにほぼ完売。さらに2006年には9500個を売り切りました。「楽天グルメ大賞」を受賞したのは、この年が最初です。
――今年の販売見込みは。
【松田氏】2018年のお正月向けおせちは、約15万セットを用意しています。当店で扱うおせちの平均価格は1万4000円程度。約20億円の売り上げを見込んでいます。
――久松の手がける「冷凍おせち」は、ネットで購入する食品としてはかなりの高額だ。百貨店などで販売される高級おせちには「冷蔵」や「常温」も目立つが、手がける予定はないのか。
【松田氏】ありません。実は以前には、冷蔵のおせちを製造したこともあるのですが、衛生面の懸念をクリアできませんでした。安心して食べられるのはやはり冷凍おせちです。それに冷凍であれば、重箱の中で盛り付けが崩れづらいという利点もあります。