共同意思決定のすすめ

かつては医療者(医師や薬剤師など)が、治療方針を患者さんへ一方的に伝えるのが一般的でした。しかし、最近では「インフォームドコンセント」(Informed Concent=説明と同意)を行うことが主流です。ただし、これも流れとしては、治療者側から患者さんへの説明が多くなり、一方向であることには変わりありません。

そこで近年は「SDM」(Shared Decision Making=共同意思決定)という取り組みに注目が集まっています。

SDMとは、「治療者あるいは患者さんのどちらか一方が決めるのではなく、両者が話し合って治療方針をお互いの同意と納得のもと決定し、適切な治療を見つけ出すこと」です。乳がんの治療から始まった考え方で、ドイツでは約20年程前から実践されています。

最大の特徴は双方向性です。代表的な治療法のひとつである薬物療法を進めるうえで、重要な実践だと思います。薬に関して言えば、患者さんは主作用・副作用・服薬期間などオーソドックスな質問で始めることになりますが、何より患者さん自らが治療の決定に参加しているということが大切なのです。

私見ですが十分に説明し、お互いに話し合い納得したうえで開始した服薬は、予想以上によい効果を生み出すように感じています。実際、最近の臨床研究からもSDMの有効性が証明されつつあるようです。

なお、広く知られるようになったセカンドオピニオン(Second Opinion=第2の意見)も、広義には、SDMの類型のひとつと考えることも可能でしょう。

副作用のついての考察

最後に薬を服用する際に必ず生じる疑問――「副作用」について少し触れておきます。患者さんが薬の服用を中止する原因のひとつだと思われるからです。

私は、医学生や研修医によく次の質問をします。「薬を処方するとき、副作用についてはどこまで説明する?」。彼らは困ったような表情で口ごもります。理想的には何百という副作用をすべて説明したほうがいいでしょう。しかしこのやり方は、主に以下の2つの理由から現実的ではないのです。