みんな「食」の話ばかりする

――確かに、SNS時代には「そこでしか買えない」というものがどんどん少なくなっています。

【藤原】清永くんみたいに作り手側が規制して、「福岡でしか買えません」とやっても、誰かがネットで勝手に転売したら、どこでも買えちゃうことになる。

ファッションデザイナー 藤原ヒロシ氏(撮影=プレジデントオンライン編集部)

【清永】それは実際にありますね。

【藤原】そこはもう仕方ない。本当の意味でそこに行かなきゃ体験できないものって、もはやファッションにはないのかもしれない。

【清永】だから、みんな「食」の話ばかりするんでしょうね。もう食べ物くらいしか、行かなきゃ体験できないものがない。あと福岡と東京の2拠点生活をして気が付いたことですが、東京のライフスタイル誌やファッション誌は「東京のタウン誌」に見えるんです。東京の情報しか載っていないから、自分には関係ないなって。SNSを通じて得られる知り合いや友人からの情報のほうがリアルに感じられる。そういう感覚でいる人は、福岡には多いですね。

あえてインスタ映えを意識しない

――「SNS時代のファッション」というテーマでは、今年の流行語にもなった「インスタ映え」というキーワードも欠かせないかと思います。お二人は新商品を考えるとき、SNSで拡散されやすいデザインを意識することはありますか?

【藤原】個人的にはあまりないですね。へそ曲がり的なところがあるので、みんながやっていることはやりたくないタイプです(笑)。ただビジネスとしては、どうなの?

【清永】普段の商品ではあまり意識していませんが、コカ・コーラさんとのような企業コラボものでは、インスタグラムに映えるというか、ビジュアル的な要素を意識することは多いです。企業とブランドで相互にWin-Winの関係になるためには、うちに求められているものが訴求なので、SNSで広がりやすいものを作る傾向はあります。

――そういうインスタ映えするファッションが人気になっていることに対しては、どういう感想を持っていますか?

【藤原】多分、僕が若い頃からやってきたことって、今でいうインスタ映えみたいな大きな流れがあるところで、「だからこそ何をやったら映えるか」というインディーなものを追求するってことなんですよ。みんながインスタ向けに目立つものをバンバン作ってくれたほうが、人と違うことがやりやすくなるなって思います。