「変えられるもの」と「変えられないもの」を区別する

ギャラップ社のエンゲージメントのプログラムにおいては、人の強みについて、「変えられるもの」と「変えられないもの」を明確に区別しています。

高橋恭介・田中道昭『あしたの履歴書』(ダイヤモンド社)

「変えられるもの」とは、学習・経験・仕事などで身につけることが可能なものであり、「技術」と「知識」と表現されています。「変えられないもの」とは、自分の潜在能力・資質・行動パターンであり、「才能」(もしくは「資質」)と表現されています。すなわち、人の強みは、先天的な「才能」と後天的な「技術」と「知識」の3つから構成されているのです。

ギャラップ社が優れたマネジャー(管理職や上司)が養うべき能力として指摘しているものの中に、「人を見る目」というものがあります。同社では、「人を見る目を養う」ということを「人はどこまで変えられるのかを正確に認識する」と言い換えています。

つまりは、ギャラップ社では、人の強みを構成する「才能」と「技術」や「知識」とを明確に区別できる能力がマネジャーには不可欠であると述べているのです。

「あしたの履歴書」でも、スキル、技術、知識などは「変えられるもの」、そして「コンピテンシー」と定義しています。「あしたの履歴書」においては、「才能」は強みとしてさらに伸ばし、コンピテンシーは強化していくということに専念し、「あしたのPDCA」では才能とコンピテンシーを対象として向上の支援をしているのです。

なお、実際の「あしたの履歴書」のプログラムにおいては、「変えられるもの」と「変えられないもの」を区別するというプロセスを重要視していますが、受講生の中でも、「このプロセスによって大きな自己重要感をもつことができた」という感想を述べる人が多い部分になっているのです。

強みとは、「才能」と「技術」と「知識」との掛け算です。あなたも、弱みを矯正しようとするのではなく、自分の天賦の「才能」を伸ばし、「技術」×「知識」を強化していくことに注力することをお勧めします。

田中道昭(たなか・みちあき)
立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジー&マーケティング、企業財務、リーダーシップ論、組織論等の経営学領域全般。企業・社会・政治等の戦略分析を行う戦略分析コンサルタントでもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役(海外の資源エネルギー・ファイナンス等担当)、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)等を歴任。著書に『ミッションの経営学』など多数。
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