※本稿は塩沼亮潤『歩くだけで不調が消える 歩行禅のすすめ』(KADOKAWA)の項目【生きるうえでの「
避けられる苦しみを、心のコントロールで避ける
人生には、必ず陰と陽の局面があります。私たちは、「いいこと」と「悪いこと」の波の狭間(はざま)で生きています。
一度目を閉じて、心のなかに針があると思ってください。その針はメトロノームのように、心の動きにしたがって振れています。イラッとしたり、ムッとしたりした瞬間、心の針はマイナスのほうに振れますが、イラッとしたり、ムッとしたりする時間が長く続くと、針はマイナスが定位置になってしまいます。
こうなってしまうと、ネガティブが常態化するわけです。この状態は心身の健康にもよくありませんし、時に心の針が勢い余って振り切れ、最悪の場合は犯罪などの事態に至ることもあります。
慣用句として用いられる「四苦八苦」という言葉は、もともとは仏教の用語で、人間が生きるうえで思いどおりにならないことを指します。
四苦とは「生・老・病・死」。人間としてこの世に生まれてくること、年老いていくこと、病に冒されること、そして死ぬことは、どうあがいても決して逃れることはできません。
さらに、人間であるがために味わう苦しみが四つあります。
・ほしいものが手に入らない「求不得苦(ぐふとくく)」
・愛する者と別れなければならない「愛別離苦(あいべつりく)」
・嫌な人と出会ってしまう「怨憎会苦(おんぞうえく)」
・世の中はままならないものだという「五蘊盛苦(ごうんじょうく)」
これらを合わせて「四苦八苦」と呼ぶのですが、後半の四つは、避けようがない前半の四つと違い、自分の心をうまくコントロールすることによって解決できます。コントロールとは、思いどおりにいかずイライラしたり、気持ちが滅入ったりした瞬間に、「心の針をマイナスからプラスのほうへ引き戻そう」とする意識と実践になります。