税務署の仕事にも悪影響が……

産経社説は返す刀でこうも批判する。

「財務省の予算編成作業が大詰めを迎えている。年が明ければ、国税庁は確定申告の季節である。国民の信頼を失ったままでは、本来の業務に支障が出よう」

予算編成にどこまで支障が出ているかは知らないが、確かに税務署の仕事には全国で障害が出ている。

たとえば佐川氏の長官就任直後から多くの納税者から「佐川さんは国会で国有地売却の交渉記録について『破棄した』と答弁していたけど、書類を破棄したといえば許されるのか」とか、「いまの税務署に公正な税務は期待できない」といった苦情が寄せられているという。

個別の税務調査でも「もう税務書類は提出しない」といわれ、税務行政が滞っているとも聞く。

産経社説に戻ろう。

国有財産の管理について産経社説は「政府が国有財産の管理手続きを見直すのは当然である。だが、何が問題だったのかをはっきりさせないと、的確な見直しなど望めないだろう」と書き、「売却価格をめぐる対応の不備を認め、その経緯と責任の所在を明確にすることだ。以前の答弁は事実に即していないと修正するしかあるまい。官僚としての矜持(きょうじ)さえ保てなくなる」と厳しく批判する。

ここまで社説で書かれて財務省はどう動くのか、これからの動きが見物である。

産経は「安倍首相批判」もする

今回の産経社説は最後まで主張が一貫していた。

「財務省のみならず、政権全体で厳しく受け止めるべき問題だ。何よりも、低レベルな答弁を強いている政治の責任があることを、忘れてはなるまい」

政権全体の問題であり、そこには政治の責任があるというのだが、まさしくその通りである。

ここで沙鴎一歩の意見をいわせてもらえれば、今回の財務省の問題は財務官僚が「安倍1強」に忖度したところから始まった。その財務省で担当部署のトップの理財局長であった佐川氏は忖度が評価され、人事異動で国税庁長官という栄誉ある地位に就いたのだ。

産経社説は最後に「安倍晋三首相が『適切に処分したと報告を受けていた』と語ったのは、自らの責任をかわすことに力点を置くように聞こえた。佐川氏を含め、行政への信頼回復に資する対応こそ指示すべきだ」と主張する。堂々とした安倍首相批判である。