3カ月前から始まったスズキの在庫調整
“世紀の合併”といわれながらも何ら成果を挙げることなく別れたダイムラーとクライスラーに代表されるように、合従連衡の失敗が目立つ自動車業界にあって、唯一の成功例といわれる日産とルノー。その日産ルノー連合は、一時はさらなる合従連衡に意欲を見せていたが、ここにきて明らかに方向転換。キャッシュ流出をともなうM&Aからは距離を置いた。
33.4%から13%へと、フォード・モーターの持ち株比率は低くなったものの、マツダとフォードは依然として資本関係にある。いすゞ自動車と富士重工業は、トヨタの資本を受け入れ、三菱自動車は一応、“オール三菱”の支援を受けている。
そうなると俄然、注目が集まるのは、世界販売230万台で、トップテン入りしているスズキだ。そのスズキについては興味深い数値がある。08年3月末から6月末にかけての3カ月間における在庫(棚卸資産)推移だ。その時期、米国を中心とする自動車販売の異変には気がついていても、以後、これほどまでの落ち込みになることを口にした人はどれだけいただろうか。
4408億円が3983億円に――。スズキは3カ月の間に在庫を400億円以上減らしていたのだ。同期間、トヨタと日産は2400億~2500億円増、ホンダは800億円増だった。ちなみに、電機に目を向けても、パナソニック1385億円増、ソニーも1864億円の増だった。
各社が世界不況による“異常事態”に気がつき慌てて減産を決める頃には、スズキはすでに実行に移していたわけだ。それをリードしたのが、鈴木修会長兼社長であることは容易に想像がつく。
およそ50%のシェアを確保し、スズキ飛躍の大きな要因であるインド市場に参入を決めたのは82年。鈴木氏が社長に就任して4年後のこと。「BRICs」なる言葉が生まれるとは、想像すらできない時代だった。
スズキはGMがわずかに手元に残していた自社株3%を、約220億円で引き取っている。こうして81年以来続いたGMとの資本関係はあっけなく切れたわけだが、スズキは環境対応車などで提携先が不可欠とされる。鈴木会長兼社長の眼鏡にかなうメーカーはどこか。
スズキは国内では富士重工業と相互出資関係、欧州市場では伊フィアットと仏PSAプジョー・シトロエンからディーゼルエンジンの供給を受けている。
現在、世界販売台数でトヨタ、GMに次ぐのは独フォルクスワーゲン(VW)。そのVWを傘下に収めているのは、年間販売台数が10万台に満たない独ポルシェだという現実は何を物語っているのだろうか。